田舎町で両親と暮らす高校生のブリス(エレン・ペイジ)は母親(マーシャ・ゲイ・ハーデン)の意向で地元の美人コンテストに出ているが、気乗りしない。ある日女性だけのローラーゲームを見たブリスはその迫力の心奪われ、年齢を偽って入団テストを受ける。女優ドリュー・バリモアの初監督作品。本人出演もしており、チームノムードメーカーである元気な女性を演じている。
 うだつのあがらない日常をすごす少女が新たな自分を発見していくという、非常にオーソドックスな青春物語であり、堂々たるガールズムービー。初監督作品とは思えない。ストーリー自体には新鮮味はさほどないものの、出演者に魅力があり生き生きとしている。ペイジはいわゆる美人ではないが(いそうでいない顔という気はする)表情や動作がチャーミング。また、チームの先輩であるマギーを演じるクリスティン・ウィグが、ちょっと疲れた感もありつつかっこいい。チームメイトに『デス・プルーフ』で大活躍したゾーイ・ベルがいるのもうれしい。そしてヒールに徹するジュリエット・ルイスがかっこよかった。胸のなさも小じわも全く隠そうとしない潔さ!
 ガールズムービーとして所々盛り上げすぎて、その「ガールさ」にちょっとついていくのがきついなと思わなくも無かった。プールのシーンとかダイナーでの調味料かけあいとか、ノリに振り落とされそうだったし、撮っていて楽しかったんだろうなとは思うが、こういったシーンでちょっと間延びしている。ただ、そんな浮かれたエピソードがあっても、物語のベースに娘と母親との関係があることで、浮ついた感じにはなっていない。
 ブリスの母親は娘に「'50年代みたいな考え方」と言われる通り、「女の子はミスコンで優勝して条件のいい男と結婚するのが幸せ」と信じている。彼女自身もミスコン受賞者だが、ブリスの家の様子を見ると特に裕福という感じではなく、かなり庶民的。母親も仕事をしている(地域の警備員なのか清掃員なのか・・・いまいちわかりませんでした)。両親が愛し合っているのは明瞭なのだが、母親にとって今の生活は望んでいたものとはちょっと違う、少し後悔の残るものなのだろう。だから彼女は、ブリスに自分が逃した人生を獲得してほしいと願う。しかしブリスにとってそれは荷が重く、自分にそぐわないものに感じられるのだ(そもそもどう見てもミスコンで優勝できるタイプのルックスではないのだが・・・親の欲目ってすごいな)。
 ブリスは母親を愛しているし、できることなら母親の意に沿いたい。このニュアンスは、ブリス当人よりもそれを見ている観客(や、彼女の親に対する態度をそれとなくいさめるチームメイト)の方がよくわかると思う。ブリスは自分の親、特に母親に対する思いを上手く言い表すことが出来ずにいたのだろう。あるシーンで、「(母親に対して)罪悪感を感じる」という言葉が彼女の性格や家族との関係をよく表している。愛情があることと理解があることはイコールではない。でも愛情があるから理解はできなくても許容はしようとする親の姿にややほっとするのだった。