チャック・コール、マービン・クローズ著、実川元子訳
アパルトヘイト時代の南アフリカで、ネルソン・マンデラを筆頭に数千人の政治囚が収容されていたロベン島刑務所。過酷な労働と虐待の中、囚人達はシャツを丸めて作ったボールでサッカーを始め、徐々に本格的なサッカーチームを作って試合をしたいと望むようになる。現・南アフリカ共和国大統領ジェイコブ・ズマも収監されていた刑務所内で組織されたサッカーリーグと、その影響を追ったルポ。とても面白かった。最初は仲間内のチーム対抗戦だったものが、徐々にチームが増え、リーグ戦となり、運営委員会が結成され、FIFA公式ルールに則ったものとなっていく。サッカーをするために刑務所側と粘り強く交渉し、囚人たちをまとめあげ、政治的な派閥の間を取り持つという地道な作業が、自尊心を育み、アパルトヘイトを克服する歩みになっていく。更に新しい国を組織していく過程にも似ており(発生してくる問題の数々も、組織が大きくなると出やすいもので興味深い)、これがアパルトヘイト後の南アフリカを作っていく練習にもなっていたということがわかる。何より、サッカー等のスポーツに限らず人間には遊びが必要であり、身体の自由とともに精神の自由が必要だということを痛感。また今更だが、アパルトヘイトがついこの間まであった制度で、当時は多くの人が疑問にも思っていなかったということに愕然とした。