アラン・ブラッドリー著、古賀弥生訳
イギリスの片田舎の屋敷に父、2人の姉と暮らしている11歳の少女フレーヴィアは、化学実験が大好き。ある日の早朝、屋敷の畑で瀕死の男を発見したフレーヴィア。男は奇妙な言葉を言い残して死亡し、フレーヴィアの父親は容疑者として逮捕されてしまう。犯人捜索を開始したフレーヴィアだが。1950年代のイギリスを舞台にした少女探偵ミステリ。イギリスの田舎という舞台はコージィーミステリの定番だが、主人公であるフレーヴィアがとても魅力的。化学好きで特に毒薬マニア。頭はいいが、頭でっかちなので時にとんちんかんなことも言う。生意気で「いい子」とは言い難いが、どうも憎めない。この、自分の妹だったら面倒くさいことこの上なさそうだが嫌いになれないという、キャラクター造形の匙加減が丁度いい。父親や姉ら、家族との関係がきちんと描かれているところも、面白さを増している。特に父親との、愛情はあるがお互いどう伝えていいかわからない、距離のある関係の描き方は上手い。ミステリ部分よりも、フレーヴィアという少女を描いたという部分に良さがある。