川上弘美著
川上弘美が角田光代化しているような連作短編集。舞台が東京都下のちょっと田舎っぽい住宅地というところも似ている。各話の登場人物にちょっとずつ相互関係があると、なんとなくお徳感を感じるのは私だけか。が、この人はあの時実はこんな・・・という側面がわかってしまうという怖さも。角田作品ほどぐさりとはこないが、足元が徐々に沈んでいくような不穏さがある(この本、表紙の絵がそもそも何となく不穏だ。童画調なのが却って怖い)。日常の営みの中に、人間のよくわからない部分がべろんと出てくるのだ。もっとも、そのよくわからなさによって人間関係上、気が楽になることもあるのだけれど。あいまいさの中でしか成立しない何かがある。ぐだぐだだと見るむきもあるかもしれないが、本作に登場する人たちは、そのことをよくわかっているのではないだろうか。しかし川上弘美は本当に小説が上手いよなぁ・・・