南アフリカ、ヨハネスブルグの上空に巨大な宇宙船が出現した。乗っていたエイリアンたちは難民として「第9地区」と呼ばれるキャンプ地に留まることになった。そして28年後。第9地区はスラム化し、地域の人間たちからの排斥運動が起こっていた。政府は民間企業MNUにエイリアンの強制移住を依頼。MUNの責任者ヴィカス(シャルト・コプリー)は軍を率いて立ち退き勧告に向かうが。監督はニール・ブロムカンプ。製作がピーター・ジャクソンだということでも話題になった。
 舞台がアフリカ、人口は増え続けるが行くあてもなく、人道支援を行っていた(発見されたエイリアンたちが病気と衰弱で不潔かつヨレヨレなのが妙にリアル・・・)政府も今や渋い顔、というとこれはリアルな難民問題が下敷きになっているというのは明らかなのだが、堅苦しさは全然なく、燃えるB級SFテイストに溢れている。とても面白かったし、終盤の展開は燃える!設定がきちんとできていて、その見せ方と、この部分は説明しなくてもいいやという見切りが上手い。さくさく話が進むので見やすかった。ただ、モキュメンタリー手法で撮られているのだが、途中で明らかにモキュメンタリーではない(誰の視点ともつかない)映像になっている。切り替えというより併用に近いのだが、これだったらモキュメンタリー風にする必要はないんじゃないかと思った。画像がある程度粗くても許されるという利点はあるかもしれないが。
 本作に出てくるエイリアンは通称「エビ」で見た目は少々グロテスク(映画が終わった後で、若い女性が「とりあえずきれいなものを見たい」と言っていた。連れの女性2人は「私たち的には超OKなんだけど、ごめんね付き合わせて・・・」と言っていた)だし、そんなに賢そうでもない(働きバチと同じようなもので、頭が悪いというよりも上官がいないと効率的に動けないという解説がナイス)。人間たちは彼らをさげすみ、平気で残酷な仕打ちをする。この特に悪意がない残酷さが見ていてきつかった。主人公のヴィカスは基本正直な「善人」なのだが、エイリアン相手だと平気で姑息な騙し方をするし、交渉の成り行きで彼らに危害が加えられても大して気にしない。本作では意図的に人間を卑小に、他者に対する想像力の欠けた存在として描いている。人間の、陥りがちな欠点を突き付けられた感じがする。
 そんな中で徐々に(肉体的な変化によるものだとしても)エイリアンを一個の人格を持った存在と認識していくヴィカス。王道の展開ではあるのだが、映画を見ている側も、だんだんエイリアンがかわいく見えてくるところがすごい。観客の感情のコントロールをしっかりやってくるなぁと感心した。ヴィカスくらいに「変化」してしまわないと異なる存在のことなどわからないよという、かなり悲観的な視線とも言えるが・・・。ともあれ小難しいことは言わず、後半は妙に派手で盛り上がるので、飛び道具イイ!とかパワードスーツちょうイイ!とかウッキウキしているうちに上手く乗せられてしまった感じもする。それはいい娯楽映画であるということなのだと思うが。