投資家としての成功を夢見つつも、病気の父親に代わって家業のレストランのきりもりをせざるを得ないイアン(ユアン・マクレガー)と、酒とギャンブルに溺れがちだが自動車整備工としての生活にそれなりに満足しているテリー(コリン・ファレル)の兄弟。ある日イアンは女優のアンジェラに一目ぼれし、自分を裕福な実業家と偽ってしまう。一方テリーはポーカーで多額の借金を背負ってしまった。金策に困った2人は金持ちの実業家の伯父ハリーに相談する。ハリーはある取引を持ちかけてきた。
 ウディ・アレン監督の2007年の作品だが、日本での公開はなぜか2010年に。『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に続く、ロンドン三部作だそうだ。正直、物語としての意外性はびっくりするくらいない。『マッチポイント』のような心理サスペンスの面白さや、『タロットカード~』のようなある種の底抜け感があるわけでもないのだが、個人的には何となく好きな作品。まあアレン作品は大概(結構な駄作であっても)嫌いじゃないんですが・・・。物語の省略が潔いところが気に入っているのかなと思う。見せなくて事足りるところは見せない、スパスパと切っていく感じが気持ちいい。アレンの作品は、それが悲劇であれ喜劇であれ、人生に対する諦観が根っこにあるように思う。そこが好ましい。
 欲に目がくらんだ兄弟の転落劇は、特に目新しさはないものだ。ただ、俳優2人の力でそこそこ見せてくれる。ユアン・マクレガーはいつものことながら非常に無難。主演作品としては『フィリップ、君を愛してる!』の方が底力を感じさせたものの、安定感は抜群。対してコリン・ファレルは久々のハマり役だった。優しいけれど弱い男のかわいさと情けなさを好演していた。個人的にこういうタイプは好きではないのだが(笑)、ファレルがやると、いるいるこういう人~!という説得力があった。マクレガー演じる兄には、そこまでの実体感はない気がする。
 それにしても、船に付ける名前がよりによって「カッサンドラ号」とは縁起が悪すぎる!知らないっておそろしい・・・。