理想的な妻として、年上の夫に尽くし2人の子供を育ててきたピッパ(ロビン・ライト・ペン)。夫の意向で郊外に引っ越してきたものの、周囲は老人夫婦だらけで馴染めずにいた。そんな折、隣家の息子クリス(キアヌ・リーブス)が離婚、失職し実家に戻ってくる。
 邦題はちょっとなぁ・・・。恋愛要素があることはあるが、それがメインというわけではない。一定の客層を狙ってかえって外してしまっている気がする。監督はレベッカ・ミラー。
 ピッパは良妻賢母の鑑のような生活をしているが、少女時代は家出し、ドラッグにハマり根無し草生活という、奔放な娘だった。それが今の夫とめぐり合い、彼とつりあうように自分を全く変えてしまったのだ。彼女は適応力がありすぎる。もし本作に、配給会社がターゲットとしているであろう50代既婚女性が共感するとしたら、恋をしたいというところではなく、この適応しすぎたというところなんじゃないかと思った。結婚に対するピッパの発言は説得力がある(カフェで「この中のどの男性とでも結婚できるわ、結婚は意志よ」とか)し、この人はこういうやり方で結婚生活を続けてきたのか・・・と思うと少々寒気も。
 結婚生活を続けるにはピッパ言うところの「意志」が必要だろうし、相手と折り合っていく為に多少は自分を変えなければならないだろう。ただ、変えるといっても限度がある。元々の自分とあまりにかけ離れた状態で、果たして何十年も生活できるだろうか。ピッパは恋愛をしたいというよりも、適応力の限界がきたんじゃないかと思う。夫の浮気に対するあてつけもあるだろうが(笑)。
 ピッパの「限界」が夢遊病という形で表されるのはちょっと笑ってしまうし、クリスとの仲の進展の仕方が急展開すぎたり(クリスのボンクラキャラにリーブスがあまりにハマっていてちょっと心配になったよ・・・)、夫の元妻の凶行が唐突だったり、夫との顛末が取って付けたみたいだったりと、結構難点もあるのだが、局地的にリアルなところがあって、予想より面白かった。ピッパと母親の関係、ピッパと娘の関係は、それほど多くは描かれないもののリアル。仲の良さにしろぎこちなさにしろ、行き過ぎているところが。これは共感できた。このあたりを突っ込んで描いても面白かったと思うが、それだと別の映画になっちゃうなぁ。
 何より、ライト・ペンをはじめ出演している女優が全員魅力的。ウィノナ・ライダーがピッパの友人役なのだが、いるいるこういう困った女!と大笑いしてしまった。