クリスマスと終業式を控え、SOS団のクリスマスパーティーをやるとはりきるハルヒ(平野綾)と、彼女に付き合わされるキョン(杉田智和)はじめSOS団の面々。翌朝、キョンが登校するとクラスの誰もハルヒのことを覚えておらず、朝比奈はキョンのことを知らず、小泉がいた9組そのものがなくなり、長門はおとなしい普通の女子生徒になっていた。キョンを残して世界が変わってしまったのだ。
 人気シリーズがついに劇場アニメーションに、といっても私は原作にもTVシリーズにも全く触れたことがない。キャラクターとその相関関係程度を突貫工事で頭に入れて見に行ったのだが、予想以上に楽しめた。正直、SFとしてこんなにガチだとは思っていなかったのでびっくり(もしかして今の10代のSFリテラシーはめっさ高いのだろうか)。
 ネット上では既に色々な方が指摘しているが、私も「ビューティフルドリーマー」(押井守監督作品)を思い起こした。逆ビューティフル~と言った方がいいか。あと設定以外でも、キョンのモノローグが何かに似ている・・・と思いながら見ていたのだが、これは押井作品における古川登志夫(あたるに限らず)に似てるんじゃないかと。声質はそんなに似てないと思うのだが、モノローグの長さと語り口調に彷彿とさせるものがある。とするとキョンの語りは80年代オタクの語りに似ているということか・・・。
 ただ、ファンではない身からすると「惜しい!」感も否めない。キョンの色々と過剰なモノローグは原作ファンにはおなじみなのだろうが、初見、しかも青春が終わって久しい身には、まだるっこしく気恥ずかしく、少々辟易とした。モノローグ説明に頼るのは基本ご法度、というのが映画のお約束だが、あえて禁じ手を使ったのは、原作に忠実であるためだろう。しかし映画にする以上、映画としてベストなアレンジにしてほしかったというのが正直なところだ。せめてもうちょっと短ければ・・・。長いなりによくまとまっているとは思うので、よけいに惜しい。
 なお、アニメーションとしての絵心はさほど感じなかった。キャラクターの演技はいわゆるアニメキャラクターの動きをなぞったような、ある種のテンプレだし(作画面でも遠近感が微妙なところが気になった)、演出もどちらかというとやぼったい。特に後半、キョンの自問自答シーンの演出には、いくらなんでも今これはなぁと苦笑してしまった。多分、本シリーズで突出しているのはシナリオの部分なんだろう。絵は月並みで十分なのだ。それにしても、本作の絵柄が既に少々古臭く感じられるということにびっくり・・・。そりゃTVシリーズ開始からは結構経つが、風化が早すぎる。
 なお本作は、本筋ではサブヒロインな子をヒロインとした(といっても最終的には正ヒロインであるハルヒをキョンは選ぶわけですが)スピンアウト作品という面もあるのだろうが、スピンアウトが大々的に映画になって大ヒットというのは、シリーズとしては末期症状なんじゃないかという気もする。あと、「改変後」のサブヒロインが、「お前らこういうのが見たかったんだろ?」的な非常に萌えそうな造形になっているのが、なんとなく居心地悪かった。よく出来たパラレル設定二次創作見ているみたいで・・・。本作、サブヒロインが見た「夢」であると同時に、シリーズファンが見た「夢」とも言える。最後には「それはないわ」となるわけだが。