明治40年台に、地図測量の為に未だ白紙であった剱岳への登頂を試みた人たちを描いた、木村大作監督『剱岳 点の記』。撮影のあまりのすごさが評判となり、ロングラン上映を果たしたこの映画の、撮影ドキュメンタリー作品だ。監督、撮影は『剱岳 点の記』のディレクターである大澤嘉工 。
 正直なところ、ドキュメンタリーフィルムとしてはさほど出来がいいというわけではないと思う。ナレーションが少々過剰で、TVのドキュメンタリー番組としてはまあ普通かな、という印象だ。ただ、『剱岳』の撮影がどのように行われたかが垣間見えるという点では貴重。映画を見た人はおわかりだろうが、どう見ても無茶なのである。で、実際にドキュメンタリーで見ると、やはり無茶だった。ロケ場所に行く為に数時間登山し、2カット撮影して終了、というようなことはざらで、全く撮影できずに宿に戻ることもある。もちろんトケは全て天気待ちなので、やたらと時間はかかる。さらに山岳ガイドがついていても危険な場所も多々あり、文字通り命をかけた撮影だったという(カメラの設置場所を見ると明らかに足元危険なところが・・・)。実際に重傷者も出ているし、体を痛めてやむなく下山する俳優も。金銭面においてもリスクマネージメントにおいても、よくプロデューサーがOK出したな(ほんと、プロデューサーよくがんばったなと・・・)と思うくらいにリスクが高い。
 映画は順撮り、山頂部にはもちろん徒歩で上るしかない、当然機材も人力で運ぶし、大人数での登頂は無理。映画のロケとしては最小限の人数で動けるように、初期段階から監督が指導していたそうだ(実際に山頂部で撮影したスタッフは20人程度らしい)。監督である木村のキャラがかなり濃いのでつい忘れてしまう(笑)のだが、カメラマンとして様々な現場でのノウハウが蓄積されているからこそできる技なのだと深く納得。
 また、撮影中は山小屋での集団生活を余儀なくされるので、一体感は増す一方で、辛い人には辛いだろうと思った。おそらく、俳優にしろスタッフにしろ、性格の相性も人選の大きな要因になったのではないかと思う。特に俳優の人選は、演技力や風貌以上にメンタル面の安定感が重要だったのではないかなと思った。主演の浅野や香川にも度々カメラが向けられるが、浅野はいつもテンションが一定で安定している(仲村トオルも同タイプだと思う)。また、香川は本来神経質だがそれを自制できるタイプという印象。カメラを向けられるたびに何かおもしろいことを言うというサービス精神が高く、結構気使いの人なのかもしれない。
 スタッフにも俳優にも大変な負担が強いられる現場なのだが、山の風景の美しさには、そうまでしても撮影したくなるよなと納得させられる。木村はプロデューサーと共に登山し、撮影した素材を見せて回って資金を集めたというから、最初にロケ地ありき、山の魅力で説得できるという確信があったのだろう。魅力をがっつり撮影できる木村もやはりすごい。