銀行の融資窓口担当のクリスティン(アリソン・ローマン)は昇進を目指していた。ある日、1人の老女が不動産ローンの延長を頼みに来たが、クリスティンは上司に「厳しい決断もしないと」と言われたことを気にして延長を断る。老女は「私に恥をかかせた」とクリスティンを駐車場で待ち伏せして襲い掛かり、彼女に呪いの言葉を残す。監督はサム・ライミ。
 『スパイダーマン』の大ヒットで、これでライミ先生もハリウッドのドル箱ですか巨匠の仲間入りですか・・・と思っていたら新作これかー!どう見ても立派な低予算B級映画である。精神のバランスをとっているかのような振れ幅。ただしB級はB級でも、B級内の超A級というか、作品としてすごくしっかりとしていてブレがないという印象を受けた。私はホラー映画をあまり見ない(実はライミ監督のホラー系作品見るの多分初めて・・・。ライミファンのみなさんほんとすいません)のだが、ホラーが好きな人でもそう関心のない人でも、どうしても苦手!という人以外は楽しめる手堅い作品だと思う。
 伏線となる部分では「これは大事ですよー」とちゃんと目配せするし、これから見せ場が来るぞ!というところではちゃん「くるぞくるぞくるぞキター!」とわくわくさせる。客への説明が結構丁寧でわかりやすい。このわかりやすさは、「恐怖」の見た目がとりあえずインパクトあって面白いというというのもある。老婆が文字通りかぶりつきむしゃぶりつく。しかも超強い。どんなホラーだそれは!ホラー化する前から嫌悪感を与えるような造形にしてある(銀行窓口で入れ歯を外したり痰吐いたりサービス用のキャンディをごっそりガメたり)あたりにライミの意地悪さが窺える。
 ジャンルとしてはホラーなのだが、妙に笑える。恐怖と笑いは紙一重という側面もあるだろうが、これは絶対笑わせようと思ってやってるよなーという展開が多々ある。序盤の見せ場であるクリスティンと老婆の車内でのどつきあいからして結構笑えるのだが、その後もまさかの鼻血噴射(何も鼻から出さなくても・・・)や「ケチャップがついちゃったの」やクライマックスの文字通りの泥仕合までゾっとする&笑えるところ満載だ。個人的に一番ウケたのは、ディナーの席でいきなり和解するクリスティンと恋人の母。キーワードはそこかよ!
 ただ、本作がスッキリ楽しめる作品かというと、ちょっと微妙。ホラーだからというのではない。クリスティンは善人でも悪人でもない普通の人、どちらかといえば善良な女性であり、ほんのちょっとの迷いでとんでもないものに襲われる、しかもそのちょっとの迷いは、誰でも持ちえるちょっとした欲から出ている。悪い人ではないのになぜこんなことに・・・。ライミは人の努力とか善性とかにあまり信用を置いていないのではないかと思う。