第22回東京国際映画祭で鑑賞。グッチの元デザイナー、トム・フォードの初監督作品。ゲイで大学教授の男(コリン・ファース)は交通事故でパートナーを亡くした。1人の生活に耐えられなくなった彼は、自殺を決意する。
 服にしろインテリアにしろ、全てにおいて上質そうでセンスがよくて大変腹立たしい(笑)。舞台は1960年代なので、今最先端のファッションというわけではもちろんないのだが、その時代の流行に沿いつつ、現在でも野暮ったく見えないあたりはさすがトム・フォードと言うべきか。
 核への恐怖、共産主義への恐怖が高まってくるという時代背景。主人公の同僚が自宅に核シェルターを作ったと話しているあたりにも時代の空気が見える。教授が講義の中で見えないものに対する恐怖、ひいてはマイノリティに対する恐怖(話の発端はユダヤ人に対する差別に関する話題。ユダヤ人てマイノリティ扱いだったのか?)に言及するが、確かに恐怖が背景にあった時代だったのだろう。そして、こういう時代の中でゲイとして生活することはかなりのプレッシャーだったはずだ。現代を舞台にしなかったのは、性的マイノリティに対するプレッシャーの度合いが全然違うからだろう。
 ただ、マイノリティとしての葛藤や時代の不穏さというのはあくまで味付け程度であって、本筋は最も近しい人を亡くした悲しみ、寂しさにある。孤独感が映画の底に常に流れている。これは主人公の元恋人(ジュリアン・ムーア)が最も体現していると思った。彼女は今でも主人公に未練があるが、彼にとって彼女は友人ではあってもパートナーにはなりえない。
 もっとも、かわいい男子学生(ニコラス・ホルト。『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントと共演していた子ですってよ!びっくりした)が主人公に必死でアプローチしてきたりするので、結構都合のいい方向へ流れるなー、フォード先生はかわいい系の子がお好きなのかしらと苦笑いしてしまうのだが。