敗戦直後の日本。結核に倒れた利(染谷将太)は、結核療養所である健康道場に入院した。入院患者を「塾生」、看護師を「助手」と呼び、一風変わった健康法を実践するその施設では、お互いをあだ名で呼ぶのが慣わしだった。利助は「ひばり」と名付けられ、看護師マア坊(仲里依沙)と仲良くなり、先に「卒業」した詩人のつくし(窪塚洋平)へ手紙を書く。そして新任看護師長として、竹さん(川上未映子)が赴任してきた。
 監督は『パビリオン山椒魚』の冨永昌敬。『パビリオン~』は見ていないのだが、本作はポップでこぢんまりとした作品だった。原作は太宰治の同名小説。結核療養所が舞台ではあるのだが、学園もののような、妙なにぎやかさと楽しさがある。社会から浮遊したモラトリアム期間というところでは、学園ものと共通しているのか。
 ひばり、マア坊、竹さんの3人が中心となるのだが、この3人の関係が取り立てて鋭く描けているとは思わなかったし、人間関係を描こうという気はそもそもあまりないのかもしれない。登場人物間にある感情も関係性もあいまいなまま、何かのフラグが立ちそうで立たない、何か立っても立ち消えてしまうようなはかなさがある。マア坊の「いじわる」、竹さんの「いやらし」という口癖も、立ち現れようになる何かをはぐらかしてしまう。
 人の心は曖昧模糊としているが、役者の存在感は強い。特にヒロイン2人は際立っていた。マア坊は、ともすると下品だったりウザかったりしそうなキャラクターだが、それをキュートな範疇に治めている仲の個性は貴重だ。特に美人というわけではないのだが、妙な力強さがあって魅力的。また、川上が予想以上にチャーミングで参った。よく見ると若干面白い顔をしているのだが、何かの拍子にすごくきれいに見える瞬間がある(もちろんベースは美人ですが)。これで本業作家なんだから神様って不公平・・・。主演の染谷もちょっと不思議な顔立ち。どこかひっかかりのある顔立ちの人ばかり集めて作ったような映画だ。出てくる人たちが皆キュートなので楽しく見られたという、私にとっては珍しい作品となった。
 なお本作のセリフは全てアフレコ。これも珍しい。より浮世離れした雰囲気になったと思う。太宰作品の映画化としては、かなりファンタジー寄りの作品だろう。菊地成孔による音楽も、ノスタルジックでありつつ時々空間をゆがめるようないびつさがあってよかった。