監督は『あしがらさん』の飯田基晴。飯田の元に、1人の老婦人が「動物を大切に思える映画を作って欲しい」という申し出をしてきた。前々から捨て猫の面倒を見てきた彼女は、動物が簡単に捨てられる世の中に心を痛めていた。動物愛護には特に興味のなかった飯田は、戸惑いながらも日本のペットの状況について取材を始める。
 監督が、自分がよく知らなかった分野について取材しつつ学んでいくのだが、監督の姿勢が素直で変に説教臭くもなく、好感が持てる。ドキュメンタリーとしては愚直と言ってもいいくらいだが、誠実な作りの作品だと思う。本作が撮られた動機が、人からの依頼ということで、却っててらいのない形になったのではないだろうか。もし監督本人が前々から興味があったり知識が豊富な分野であったら、こういう形にはならなかったと思う。
 映画の中で紹介されるのは、民間の愛護団体の保護施設、そして行政施設など。愛護団体の人はもちろんだが、犬猫を処分する立場の保健所の職員であっても、「動物が好き」と言うのが印象に残った。業務として処分しているが、そりゃ好んで処分はしないよな・・・。捨てられる犬猫の数が圧倒的に多すぎるのだ。
 現場の人たちを動かしているのは強固なリアリズムだ(ちょっと困った猫おばさんになりかけの方もいるが)。40年間NPO等で動物の保護活動に取り組んできた女性が、処分される犬猫がいなくなることはないと言ったうえで、「多くの愛護団体が口にするのは夢想、理想とは実現できることの最高峰にあること」だという言葉に重みがあった。目の前のことから片付けていくしかないのだろう。また、彼らは生き物を生かす/殺すのジレンマと向き合い続けている。人間と一緒に暮らす動物である以上、人間が生殖面を含めコントロールするべきだと思うが、どこまでコントロールが許されるのかと思うと割り切れないものが残るし、コントロールする責任を持たない飼い主が多すぎないか。
 映画内では国内で年間に処分される犬猫の数等のデータも紹介されるのだが、私が漠然と考えていた数を遥かに上回っていて正直ショックだった(2007年の殺傷処分数は31万457頭)。私は動物愛護精神が旺盛とはお世辞にもいえないし、猫は嫌いではないが犬ははっきりと苦手だ。それでも、捨てるのはちょっとなぁとは思う。ただ、ここ数年で離婚や生活苦等によるペットの保護施設への引渡しが増加しているそうで、不況の余波を見た感があった。衣食住足りないと動物のことまでケアできないよなー。