政府の特殊工作員だったブライアン(リーアム・ニーソン)は、仕事一筋がたたって妻とは離婚。娘の側にいたい一心で仕事をやめ、再婚した妻と娘のそばへ引っ越したものの、なかなか自由に会うことはできない。そんな折、17歳になった娘が友達と2人でパリに旅行に行くことになった。心配でしょうがないブライアンだが、予感的中し、娘は正体不明のグループに誘拐されてしまう。一路パリへ向かったブライアンは、仕事で培った技能をフルに活かして娘を探す。監督はピエール・モレル、脚本・製作はリュック・ベッソン。
 原題は「taken」という至ってシンプルかつ直球なもの。そしてストーリーも非常にシンプル。さらわれた娘を奪還すべく父親が誘拐犯を追うというもの。決してひねりのある展開ではないし、脚本も非常に大味で出来がいいというわけではない(そもそもなんだあの人身売買組織・・・アルバニアの皆さんが激怒しそうな設定だよな)。しかし本作は妙に面白い。この面白さは展開の問答無用さかつ異様な速さ、そして何より主演のリーアム・ニーソンによるところが大きい。今までそんなにインパクトの強い俳優というイメージはなかったのだが、今回のニーソンの押し出しの強さは異常。最初は冴えない中年男という雰囲気で、娘の誕生日パーティーでの姿には悲哀が漂う。また、娘に対する過保護さも大変なもので、かなりイタいパパという感じ。しかしいざ自分の本分を発揮できるとなると、超強い!絶対死なない!というダイ・ハードにおけるマクーレン刑事並の活躍を見せる。
 ただ、マクレーンよりもブライアンの戦いの方が不穏であり、陰惨ですらある。マクレーンが一応警官公職に就いているのに対して、ブライアンは一般市民で何の権限もない。そしてマクレーンが警官として娘だけでなく一般人をも守るという使命を自覚しているのに対し、ブライアンは娘以外はわりとどうでもいい(笑)。娘を彷彿とさせる女の子には思いやりを見せたものの、捜査の為の手段は選ばないし死人を踏み倒して前進していく。かつての同僚だった男から情報を引き出す為に行う行為は、ヒーローとは程遠いし娘には見せられないだろう。このシーン、会場内ちょっとどよめいたもんね(笑)。
 このなりふり構わなさが、本作の展開上の粗を目立たなくしている。娘に対する過剰なまでの、狂気ぎりぎりの愛情が、妙な勢いと密度の高さを生みだしているのだ。そんな展開ありえねー!というこちらの突っ込みを封殺してしまう。ブライアンの愛情が基本的には報われない(危機が去ればまたウザい父親に逆戻り)ものだというところも、妙な悲壮感を呼び起こす。こうでもしないと娘からの愛と尊敬を勝ち得ない父親ってなぁ・・・切ねぇ。近年のリュック・ベッソンがらみの映画としては、異例の面白さ。