ルース・レンデル著、高田恵子訳
邦題は内容といまいち合っていない気がする。そういう話じゃないような(原題はA New Lease of Death)。ウェクスフォード主席警部のもとへ、彼が解決した16年前の殺人事件の真相に疑問を持つ牧師ヘンリーが現れた。牧師の息子の恋人は、なんとその殺人事件の犯人の娘で、彼女は母親に「お父さんは誰も殺していない」と言われてきたというのだ。探偵役はウェクスフォードではなくヘンリー。過去の殺人事件を探るタイプのミステリだが、出てくる人すべてが怪しくてコージーミステリのパロディのよう。しかし読者が気をそらす要素が多いことで、最後に読者が見ていたものと書かれていたものの姿が現れるシーンのインパクトが際立っている。ただ、ミステリ部分よりも、人の心理の書き方のいやらしさが印象に残る。レンデル作品はほんと人に対する悪意に満ち溢れているな(笑)!ヘンリーの煮え切らなさも彼の息子チャールズの高慢さ(若いっていやなもんですね)も鼻につく。当然鼻につくように作者が造形しているわけだが、一から十までそうしなくても・・・。