ロス・マクドナルド著、中田耕治訳
消えた娘の捜索を母親から依頼された探偵のアーチャー。美しい娘ギャリィは、ギャングの手下と付き合っていたらしい。2人の行方を追うアーチャーだが、彼以外にもギャリィたちを追っている男たちがいた。そしてアーチャーは1人の男の死体を発見する。著者の作品としてはわりと初期のもので、家族の抱えるゆがみや心理学的なアプローチなどの、ロスマク色的なものはまだ薄い。普通のハードボイルド小説だなという印象。ただ、ギャリィの母親の造形には後のロスマク作品の雰囲気が窺える。このころから親子の関係(特に親の造形)には興味があったのだろうか。娘を信じている、と自分では信じているものの無意識に不信が浮かび上がるように見える、母親の姿が印象深い。ラストの描写がよかった。母と娘だからこそ浮かび上がる心の澱ではないだろうか。父親と息子とは、やはりちょっとニュアンスが違う。