アレクサンドル・デュマ著、山内義雄訳
岩波文庫版で読破。もーうえっらい面白いんですが!全7巻が苦痛にならないってすごいことですね。無実の罪で投獄された男、エドモン・ダンテスの壮大な復讐譚。伝奇的な側面も強い。文学というよりは大いなる大衆娯楽で、当時の人たちにとっては韓流ドラマ+週刊少年ジャンプのようなものだったのでは。それくらい引きが強い。多分、読者はみんな続きを待ちわびていたのだろう。物語の構成としてはちょっといびつだと思ったのだが(やたら長いし)、人気連載マンガが人気ゆえに引き伸ばされちゃうのと同じような感じなのかも。ただ、いきなり長々と語られる挿入エピソードも、ちゃんと本筋に絡んでくるあたり、単なる引き伸ばしとも思えない。単に饒舌すぎるのか?ともあれハラハラドキドキして大変楽しい。登場人物それぞれキャラクターがしっかり立っているのだが、特にのんきなお坊ちゃん・アルベールや、自立した生き方を目指すユージェニー(当時彼女のキャラクターはどういう受け止められ方をされていたのか気になる)は現代的で古さを感じさせない。訳文も生き生きとしていて、若者っぽさが良く出ている。復讐に燃えるダンテスよりも、少年少女たちの方が印象に残った。また、ダンテスは復讐心に燃え冷酷に振舞うが、何かの拍子に本来持っている人間らしさが復讐心を凌駕する。ここになんだか感動した。多分、彼が着々と復讐を完遂していったらここまで読んでいて盛り上がらなかったと思う。ダンテスにしろ他の人たちにしろ、自分の中の矛盾に引き裂かれる感じに魅力があるし共感を呼んだのでは。