幼馴染の恋人シュシュを探す為、中国の農村から日本へ密入国した鉄頭(ジャッキー・チェン)。何とか新宿・歌舞伎町へたどり着き、昔なじみの阿傑(ダニエル・ウー)とその仲間の元へ身を寄せた。しかし日雇い仕事をしながらシュシュを探すが、彼女の行方は分からなかった。そんな中、ナイトクラブでの仕事中、鉄頭はやくざの幹部・江口(加藤雅也)を見かける。江口がつれている妻はなんとシュシュだった。監督はイー・トンシン。
 それほど期待していたわけではないのだが、これは面白い!力作です。90年代初頭の東京の雰囲気もそれほど的外れでなくつかんでいるし、よくリサーチしているなという印象(地理的に不自然さが感じられない)。主演のジャッキー・チェンがアクションもコメディも封印して挑んでいるのは意外だったが、中年男の悲哀が滲んでいて予想を上回る好演。楽しく見ることができた。
 といっても、物語自体はどちらかというと悲劇だ。鉄頭は本来朴訥とした真面目な男で、頭は悪くないがそうキレ者というわけでもない。そんな男が、生きていく為にちょっとした不法行為に手を染め、仲間を守る為にやくざに加担し、本来の自分にはそぐわない人生をおくる破目になるというところに悲しみがある。それは彼の仲間たちについても同様で、全員全くの善人というわけではないにしろ悪人ではなく、どちらかというと小者だ。最初から、彼らがのし上がっていくことにはほころびが見えており、悲劇を予感させる。
この悲劇を最も体現しているのが、阿傑だ。彼は何度も「気が小さい」といわれるのだが、気が小さいゆえにどんどん悪い方向へ進んでしまう。最終的にビジュアル系バンドマンのような格好になっていたのにはちょっと笑ってしまったのだが、彼が本来もっていた良い部分が失われていく過程は切ない。これはやくざの江口も同様で、野心により変貌していく。登場人物全員が、もうちょっといい目を見たいと願った為に足をすくわれていくという、なんともやりきれない展開だ。フィルムノワールや任侠好きにはぜひお勧めしたい。
 キャスティングがちょっとしたところまでよかった。ジャッキーはともかく、ラム・シュの姿が歌舞伎町に・・・と思うと大変感慨深いものがあるが、びっくりするほど違和感がない。香港映画臭がぷんぷんする顔ぶれなのだが、歌舞伎町にとけこんでいる。また、日本人キャストは竹中直人以外Vシネ臭ぷんぷんの顔ぶれだが(いまどきこれだけVシネっぽい顔を集められた映画もそうそうないと思う)、当然歌舞伎町との相性は抜群だ。場違いなのではと思った竹中直人も、ふだんよりも自然体な演技で、さほど浮いていない。彼が演じる刑事と鉄頭との友情とも恩義ともつかない繋がりにはホロリとさせられた。あと、出番はわずかだが、政界の大物3人が悪い顔すぎて吹いた。いや~悪そうだ(笑)。