上映前に延々と流れるアルフィーの曲が、耳について離れない。しかしくどいところも含め、ちゃんと映画の雰囲気に合っているような・・・。監督は『ラヴソング』のピーター・チャン。こんな男臭い映画も撮る人だったのかと意外だった。
 アヘン戦争後、清朝末期の中国は太平天国の乱が起き、激しい内戦状態だった。清将軍のパン(ジェット・リー)は戦いの中で部下全員を失い、失意の中一人逃げ延び、リィエンという女に助けられ一夜を共する。立ち寄った町で盗賊団の青年ウーヤン(金城武)と出会うが、パンを気に入ったウーヤンは兄であり盗賊団長のアルフ(アンディ・ラウ)に引き合わせる。しかしアルフはリィエンの夫だった。
 中国の歴史戦争ものといえば今年はレッドクリフ(これを歴史ものといっていいのかどうか微妙だが)があったが、個人的には本作の方が面白かった。当時(現在もかもしれないけど)の戦争は極端に消耗戦で、前線の兵は確実に捨て駒なんだなーと実感した。兵士は泥まみれで飢えて、周囲には死体がゴロゴロというかなり悲惨な状況。勇猛果敢な戦闘シーンを期待すると、肩透かしをくらうかもしれない。むしろ厭戦モードに突入してしまう。
 パン、アルフ、ウーヤンは義兄弟の契りを交わし、決して裏切らないことを約束する。ただ、3人は全く同じ方向を向いているわけではなく、徐々にほころびが生じてくる。パンは「誰もが不当に殴られることのない世の中にしたい」という夢を持ち、それを実現できる力を得るために戦う。ウーヤンはパンを信じ、アルフも共感する。しかしアルフは徐々に、パンのやっていることは、不当に殴られない人を生み出す一方で、また新たに不当に殴られる人を生み出すことではないかと気づいてしまう。パンは優れた将軍であり、そのやり方は軍隊を統率する上では正しい。しかし「みんなのアニキ」的なアルフにとっては、パンのやり方は非情で耐え難いものである。2人はどちらも正しいのだが、正しさの目線が食い違っている。その食い違いがどんどん広がり、悲劇へと突入していくのだ。パンがリィエンに惚れている時点で悲劇フラグがたっているので、あああそっちにいかないで~とワナワナしながら見た。予想以上に救いがない。誰かが明確な悪者だったりするならともかく、全員がどこかしら純粋な部分を保っていて、自分の「正義」に忠実であったというところが切なさアップさせている。
 主演俳優3人は全員好演している。主人公扱いなのはジェット・リーだが、色気があるのはアンディ・ラウ。そして金城武の弟キャラがハマりすぎていて吹いた。セットもおおがかりなので見ごたえはある。