敏腕新聞記者のカル(ラッセル・クロウ)は、黒人少年とピザ配達人が路上で狙撃された事件をスクープする。同じ頃、国会議員コリンズ(ベン・アフレック)が抱える女性スタッフ・ソニアが地下鉄のホームから転落死した。警察は自殺と見ていたが、コリンズはソニアが自殺するとは思えないと、旧友であるカルに相談を持ちかけてきた。独自に調査を進めるうち、黒人少年の死とソニアの死とに関連性があるのではと考えるようになったカルだが、コリンズとソニアとが不倫関係にあったことが発覚。編集局長リン(ヘレナ・ミレン)はスクープ目当てにコリンズとの接触をカルに命じるが。監督は『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルド。
 「ペンは剣より強し」と、新聞記者が社会の暗部を暴く・・・とは必ずしもいえない。カルは昔気質の新聞記者で、真実を追究し取材には妥協しない。しかしその行動は、社会的な正義にのっとったものかもしれないが、取材対象やその周囲の人間にとっては自分たちを傷つけるものになりかねない。カルは最初そのことに無自覚なように見える。しかし相手に指摘されて、それは悪かったなと反省するかというとそうでもない。というか、反省してもやめられないといったほうがいいのかもしれない。その結果、真実と友情とを天秤にかけるような破目に陥るのだが、彼はあくまでスクープを追う。その行動は悪辣といってもいいくらいだし、フェアとは言いがたい。単純に正義の味方とは言えず、むしろ記者という職業にとり付かれているとも見えるところが面白い。
 カルがそこまでしてたどり着いた真実は、果たして彼の犠牲に見合うものだったのだろうか。皮肉な結果ともいえるし、ネタが一気に矮小化されたともいえる。しかし彼はやはり、新聞記者としての正義を全うするのだ。それがカルの筋の通し方であり、記者としての矜持なのだろう。その矜持により失ったものも大きいのだが。記者であることを選択すると同時に記者であることから逃げられない、カルの苦さと諦念が垣間見えた。
 ラッセル・クロウは相変わらず無頼キャラ。あまり好きな俳優ではないのだが、安定感はある。この人が出てる映画ならそんなにハズレじゃないだろうな、という気になる俳優ではある。そして俳優としてのベン・アフレックを目にするのはなんだか久しぶりなのだが、ようやくいい出演作にめぐり合えたかなという印象。また、局長役のヘレン・ミレンが辛らつなキャラでかっこいい。彼女が会社の正義=売り上げアップを(不本意とは言え)代表しているのもバランスがとれている。