桜庭一樹著
直木賞受賞後はじめて出版された小説そうだが、上手くなってる!読みやすい!昔の後半ぐだぐだ加減がウソのよう・・・。母親を追い続ける娘の物語だが、あえてよくあるパターンの物語をもってきたのではないだろうか。ベタなネタでどこまでやれるか、という挑戦だったのかなと。『私の男』でもそうだったのだが、現実からちょっと浮かすというか、普遍的、神話的な方向へもっていこうとしているように思う。著者が今まで度々書いてきた「親に愛されたい子供」ものの集大成である。これから、ようやく大人の人間の話を書けるのではないだろうか。しかし本作の主人公は最後の最後まで「母の娘」であり、母親を諦められない。その姿には少々寒気もする。なお、今まで読んだ著者の作品では、どの作品でも年長男性(父親ないしは父親的な)の造形がほぼ同じなところに、何かの業を見た感あり。