監督ジャック・ドゥミ、作曲ミシェル・ルグランによる1964年製作の名作ミュージカルがリマスター版で公開された。初めて見たのだが、確かに名作。要所要所でぐずぐず泣いている女性客もいたのだが、そりゃあ泣くわと思った。すばらしいです。
 1957年、シェルブールの傘屋の娘ジュヌビエーブ(カトリーヌ・ド・ヌーブ)と自動車修理工場で働くギイ(ニーノ・カステルヌオーボ)は恋人同士だった。しかしギイは2年間の兵役に発つ。2ヵ月後、ジュヌビエーブは妊娠していることに気づく。ギイを待ち続けるジュヌビエーブだが、裕福な宝石商のカサールもジュヌビエーブに惹かれ、彼女の母親・エムリー夫人にジュヌビエーブと結婚したいと申し込む。
 タイトルロールからしてデザインの妙を堪能できる、色の取り合わせが実に美しい作品だった(リマスターになったことで、さらに発色よくなったかも)。建物の壁の色や室内のインテリア、衣装の色味など、全てに細心の注意を払って配色しましたよというような感じ。特に女性たちの衣装は、おしゃれなのかと問われるとちょっと困るが(笑)色がきれいだった。もっとも、ド・ヌーブが着ていた水色ギンガムチェックのワンピースなどは実際に着てみたくなるような(似合うかどうかは別としてな)かわいらしいもの。
 配色の鬼とでも言うべきドゥミの技を堪能した。しかしこの映画、決してビジュアルと音楽最優先というわけではない。予想外にドラマとして面白かった。正直、前半のモナムールジュテーム言い(いや歌い)続けているあたりではハイハイもういいですよーと眠くなってきてしまったのだが、ジュヌビエーブの腹が膨れてきてから俄然面白い。出産を控えギイを待つジュヌビエーブはある決断をし、やがて帰郷したギイもある決断をする。
 ここから終盤のクライマックスに向けての流れが、映像は美しくファンタジックですらあるのに話の展開はかなりシビア、地に足が着きすぎているのがすごい。このあたりが、アメリカ映画とは決定的に違うんだろうなと思った。男女のあり方の成熟度が、フランスの方が格段に高いんでしょうね(笑)。恋のうつろいやすさ、人の心の変わりやすさに対する諦念のようなものを感じる。ジュヌビエーブが「彼(ギイ)と会わずにいるのになんで平気なのかしら」とつぶやく姿には凄味すら感じる。しかし、諦念はあるがニヒリズムには陥らない。人は変るが人生は続くということに、すごく肯定的だと思った。ラストシーンにそれが集約されている。
 それにしても本作、一見唯美的でありつつ、人間観察が実に鋭い。ジュヌビエーブとギイのやりとりで、ジュヌビエーブがギイに「ガソリン臭い」というがギイは「これが僕の香水さ」と返す。この時点ですでに、この2人はもしかしてうまくいかないんじゃないの?と匂わせるのだ。また、ジュヌビエーブとその母親の関係も、親密さと微妙な力関係の見せ方が的確すぎて怖い(笑)。カサールに対する態度も、ジュヌビエーブの夫候補として気に入っているというより、自分が異性として好意を持っている風なのが生々しかった。