田舎町の神社の娘・ノン子(坂井真紀)は、離婚して東京からで戻ってきた36歳。同級生がやっているバーでくだをまく毎日をおくっていた。ある日、神社のお祭に店を出したいという青年マサル(星野源)の面倒を見ることに。同時に、離婚した夫であり、売れないタレントだったノン子の元・マネージャー(鶴見辰吾)が押しかけてくる。監督は熊切和嘉。
 予告編では「恋せよ乙女」的に、女性に向けた面を強調していたが、女性が見て元気になる映画かというと、ちょっと微妙だと思う。むしろ、タイトルを含め、ノン子が抱いている鬱屈や年齢ゆえの焦りみたいなものがじんわり滲み出していて、見ていてそうそうかわいらしい気分にはならない。冒頭、同級生のバーでくだをまく様子は、一目でこいつ嫌な女だししょうもない奴だなと一目でわかるもので、しかも「あーいるいるこういいう女」と実感できる造形なので、何かいたたまれない気分になる。
 また、ノン子の実家に転がり込んでくるマサルも、夢がある、大きな世界を見たいと口では言うものの、その手段はあまりに的外れで、やっていることは妙に子供っぽい。無駄なポジティブさとそれが否定された時の反動の黒いオーラ(でもショボい)は、あーこのひとちょっとヤバい近寄りたくない・・・と思わせるものだ。かわいいといえばかわいいのだが、色々なことを処理しきれない感じが実にイタい。イタいが直視できるキャラクターになっているのは、演じる星野源の飄々とした雰囲気に助けられているのだろう。
 ノン子もマサルも、わりと(というかかなり)ダメな人間だ。そのダメさが生々しい。熊切監督はこういうところが上手いなぁと思う。大きな欠陥があるダメさではなく、小さな欠陥が積もり積もったダメさといえばいいのか、ダメさに手ごたえがあって、見ていて困るのだ(笑)。また、他人に対する嫉妬とか悪意とかも、その対象が「ちょっと上」程度なのがまた生臭い。リアルに想像できる範疇で自分より恵まれていると、すごく恵まれている人に対してよりもより腹立たしいというショボさが・・・。
 もっとも、ノン子は自分のダメさ、ショボさに対してある程度自覚している。もっとも自覚したからどうなるわけでもなく、だからこそ現状がいやでたまらない。彼女は全部壊れちゃえばいいのに、とうそぶく。どうしようもない日常を突破するには非日常をよびこむしかない。そしてついにその契機が訪れるのだが、彼女は別の道を選ぶ。この映画、さほど面白いとは思わなかったのだが、ここの鮮やかさで挽回したかなという感じがした。最後、ノン子の表情が冒頭とは全く異なっている。
 主演の坂井はヌードも披露して頑張っている。監督の以前の作品『青春金属バット』でもいい味を出していたが、今回も結構いい。すれた感じの女の役がはまっている。若い頃よりも今の方が魅力的なのでは。