ジャン=パトリック・マンシェット著、中条省平訳
精神病院に入院していたジュリーは、大会社の社長アルトグに、甥っ子であるペテールの子守として雇われる。しかしペテールと共にギャングに誘拐され、誘拐犯の汚名まで着せられそうになる。こういう、いわゆる「古典の名作」には相当しないであろう作品も出してくれるのが、光文社古典新訳文庫のいいところですね。冷めた文体が魅力的な悪漢小説とでも言えばいいのか。文章が非常に映像的で、このまま絵コンテに書き下ろせそうだなと思ったのだが、実際に映画化されたそうだ(日本未公開。訳者によれば褒められた出来ではなかったようだが)。スピード感があり、アクション映画のよう。キャラクターの扱いが非情といってもいいくらいで、人物の内面はさほど見せず、読者に共感させることもないという距離感がいい。描かれるのはあくまで事象の流れだ。「泣かせる」ミステリの対極にあるような小説。