スイスの小さな村に住む80歳のマルタ(ステファニー・グラーザ)は、夫に先立たれて生きる意欲を失っていた。そんなとき、かつて諦めた、自分で刺繍をしたランジェリーを売る店を開くという夢を思い出し、3人の友人の力を借りて夢の実現にのりだす。しかし、牧師であるマルタの息子を筆頭に、保守的な村の人たちは大反発する。監督は新鋭のベティナ・オベルリ。本国スイスでは「ダヴィンチ・コード」「パイレーツ・オブ・カリビアン」を抜くヒット作品となったそうだ。
 大ヒットしたのも頷ける、見るとほんのりと元気が出てくる作品。一見おとなしいが意外と根性据わったマルタの奮闘だけでなく、マルタの情熱に感化されるように、彼女の友人らも変化していくのがいい。最初からマルタの計画に乗り気だった自称アメリカ帰りの女性はともかく、元社長夫人でツンツンしていた女性が持ち前の商魂を発揮する一方で新しい彼氏をゲットしたり、固物で夫にも息子にも従順だった専業主婦が猛然と反発するようになったり(しかし夫との絆は確固としてあることにほっとする)と、新しい人生に踏み出していく姿は瑞々しい。いくつになっても人は変わっていくことができるのかもしれないという希望を持てる。高齢化社会にはうってつけの作品ではないだろうか。
 しかしニコニコできる一方で、腹立たしい部分は実に腹立たしかった。映画として腹立たしいのではなく、登場する人たちに対して腹立たしいのだが。マルタたちが住む村は昔ながらのムラ社会で、とっても保守的。マルタに対しても「老いては子に従え」とばかりに息子夫婦からのプレッシャーがかかる。加えて、女性はおしとやかに控えめに!という世界なので、ランジェリーショップなどもってのほかというわけなのだ。特に牧師であるマルタの息子は、自分が不倫中なのは棚にあげて「はしたない!」と大騒ぎする。また村のリーダー気どりの党員(マルタの友人の息子)も、頭は固いわ視野は狭いわで大変いらだたしい。さらに2人ともヘタレである。男性にはちょっとかわいそうな設定かもしれないけど、たくましくしたたかなおばあちゃんたちと対照的で、ラストの大団円が際立つ。
 楽しい映画ではあるが、途中でシャレにならない悲しい出来事は起きるし、上記のとおりムラ社会に対して腹は立つしで、気分の良さと相殺された感じだった。予告編ほどほのぼのした雰囲気ではない。ムラ社会なまなましくて怖いわー。