第二次大戦が起きなかった、1945年のもう一つの日本。その日本の「帝都」で、怪人二十面相と呼ばれる強盗が富裕層を狙っていた。それに対する名探偵・明智小五郎(中村トオル)。一方、サーカスの曲芸師・平吉(金城武)は、謎の男の計略により、怪人二十面相に間違えられ逮捕されてしまう。監督・脚本は「エコエコアザラク」シリーズの佐藤嗣麻子。
 昭和20代をモデルにしたレトロな世界(CG、セットを多様しているようだが、上海でのロケもしているようで、町並みはちょっと魅力がある)に、ちょっとうさんくさい科学の組み合わせ。監督はこれがやりたかったんだろうなーというのがしみじみとよくわかる。レトロな「マンガ映画」っぽい雰囲気に徹している。正直、CGがややのっぺりしていて画面から浮いているように感じられるところもあるのだが、それも「マンガ」と思えばそんなに気にならない。むしろ、意図的に実写とは異質の質感にして、「これはマンガなんですよー」という目くばせをしているようにも思える。金城の若干拙いセリフ回しも、中村の妙にケレンのある演技も、マンガだと思えばむしろプラスに働いている。
 良くも悪くも大味な映画なのだが、そのマンガっぽさに救われていたと思う。CGやワイヤーアクションに頼り切らず、金城がアクションをそれなりにこなしているのもよかった。生身の動きがある程度入ると、やっぱり映画に躍動感が出ると思う。屋根づたいにひょいひょい移動していくアクションにはウキウキした。
 しかしそれでも、脚本の粗さは気になった。ストーリーが荒唐無稽であるとか、矛盾があるとかはさほど気にならない(そういうことがマイナス要因になるタイプの映画ではない)のだが、キャラクター設定にブレがあるのはいただけない。最初に提示された設定がその後まったく機能していなかったり、こういう言動をした人が、その後になんで矛盾する言動を?と気になる部分が多々あった。平吉が泥棒を極端にいやがる理由が提示されないところは特にひっかかった。一応、泥棒一味に頭を下げて~という場面はあるものの、行動が唐突すぎて、単に失礼なやつに見えてしまう。「気のいい正直な青年」という設定なのだろうから、それはまずいだろう。また、松たか子演じるヒロインも、自立心のあるお嬢様のはずなのに外の世界を全く知らなかったり、合気道の心得があるという設定が全く役に立っていなかったりと、もったいない部分が大きかった。
 それでも、制作側が楽しんで作った雰囲気はあるので、そんなに嫌な気分にはならずに見られた。マンガ映画としては、出演者の年齢層が若干高めかなとも思ったが、かつての少年少女が活躍するマンガの世界と思えば納得。また、出演者の年齢層がやや高めというもっと大きな要因としては、レトロなスーツやドレスが似合う人を選んだのかなと思った。特に男性陣。今の20代俳優で三つ揃いのスーツが似合いそうな人ってあまりいないような・・・。その点、中村トオルはおそろしくこの手の服が似合う。フロックコートが似合う日本人男性は結構レアだと思うのだが。