福永信著
小説内で一行目に「Aは~した」とあり、二行目に「そしてAは~」とあれば、一行目のAと二行目のAは同一人物とみなすのが一般的だろう。しかし実際のところ、一行目のAと二行目のAが同一人物であるという保障はない。また記載されていないだけで、二行の間に経過した時間は1分かもしれないし1年かもしれない。読者は記載されていなくても行間を読んでいる。小説を読む時は、実は様々な「お約束」をふまえているのだ。そのお約束からあえて外れることによって、小説に課せられているルールを強く意識させる、流し読みすることを拒絶しているような作品。