マイクル・イネス著、今本歩訳
 第二次大戦中、乗っていた船が転覆し、とある島に流れ着いたスコットランドヤードの警官アプルビイたち。なんとか島での生活をはじめたものの、乗船者の一人である黒人人類学者が死んでいるのが発見される。ミステリ小説の体裁をとってはいるが、まじめな謎解きものと思うと肩透かしどころかバカを見そうだ。コメディ小説、冒険小説のパロディ小説としての側面の方が目立つ。本作は実際に第二次大戦中に発表されたそうだが、そう思うとシニカルでもある。全く平和な状態で書かれた、どこか遠い国で戦争しているみたいな雰囲気なのだ。妙に長閑。なお、さまざまな文学作品からの引用やパロディが満載だそうで、文学の素養のない身にはちとつらいところも。