川上未映子著
 脳がない状態の人がいたわけでもないのに何故脳で考えていると言えるのか、私を私たらしめているのは奥歯だということにする!という「わたし」が私と歯について延々としゃべくる。「わたし」が何層にもなっているのだが、あくまでも「わたし」が考えるところの「わたし」なので、外部からの視点が入るとその世界はとたんに崩壊してしまう。「わたし」を捨ててやっと解放されるのかもしれないが、「捨てよう」「解放された」と思うのも「わたし」であり、「わたし」から逃れる道などなく、息苦しさを感じる。好きな作品というわけでもないが、『乳と卵』と同じく、一箇所うわこれすっごいよくわかる!と思った箇所があり、妙に気になる作家ではある。