川上未映子著
 東京に住む私の元に、姉の巻子とその娘・緑子がやってきた。巻子は東京の有名クリニックで、豊胸手術をするつもりなのだ。文章をとぎらせずにどんどんつむいでいく、アクの強い文体だが、私は割りと好きです。巻子も緑子も自分の体に違和感を感じているが、どうしてそう感じるのか、どうすればいいのかというところの自覚度が全く違う。その自分の心身に対する自覚度に応じているのか、私と緑子の語りで構成されており、抱える問題が一番根深そうな巻子(この人の見た目の描写が、相当ヤバい状態の人だなというもので、そういうところは妙に上手い)の内面は一切言及されない(私か緑子が見た巻子の状態から推測される範囲しか言及されない)ところが面白い。親である巻子の方がむしろ子供っぽく、緑子の方が圧倒的にオトナである。類型的な構図ではあるが、あまりに実際にいそうで困っちゃいますねこれは(笑)。まあここまでお約束ふまえてわかりやすくしておけば、賞もいけるんじゃないの?という戦略だったのか、ちゃんと第138回芥川賞受賞している。著者としては、むしろ抑え気味の作風なのでは?という感じも。本気度8割くらいな雰囲気。1ヶ所、うわそれすっごいよくわかる!ていうかわたしもやってる!という部分があってちょっと怖かったのだが、恥ずかしいのでどこかは言えない。