若杉公徳の同名マンガがまさかの実写映画化。監督は李闘志男。オシャレなミュージシャンになるという夢を抱き状況した根岸崇一(松山ケンイチ)。しかし運命のいたずらにより、なぜか悪魔系デスメタルバンド「デトロイトメタルシティ」通称DMCのボーカル、ヨハネス・クラウザーⅡ世として人気が出てしまう。
 人気原作マンガの映像化は、実写であれアニメであれ実に難しい。思い切ってオリジナリティを出せば「こんなの●●じゃない!」と原作ファンにたたかれ、原作にあくまで忠実に作れば「こんなの映画化の意味ねぇ!」と映画ファンにたたかれる。もっとも本作の場合、原作にひたすら忠実にやったら後々のTV放送とかできなくなりそうだけど・・・。本作はどちらかというと前者寄りで、一見さんでも大丈夫。原作はそれほど知らない、読んでいるけどディープなファンではない層をターゲットにしているように思った。原作ファンはこんなのぬるすぎる!と思うかもしれないが、エンターテイメントとしてはこれでいいんじゃないかと思う。映画館に来ていたお客さんたちは結構ウケていたし、根岸がオシャレと思っているものがすべて微妙にダサい(オシャレ四天王のファッションとか微妙・・・)あたりはポイント押さえているなーという感じがした。ただ、原作とは面白さのポイントがずれているところもある(映画版だと原作ほどギャグ一辺倒ではなく、うっかり感動できそう)ので、そのへん許せないというファンもいそうではある。
 もっとも、面白いかというとちょっと微妙。エピソードがぶつ切りで、映画全編を通して観客をひっぱっていく力が弱いかなぁと思った。面白くないわけじゃないけどテンションがあがらない。これは脚本の難点だろう。組み立てが30分ドラマ4本みたいな感じで、散漫なのだ。また、根岸の恨み妬みパワーがクラウザーを成立させていることをわざわざ指摘したり、母親にクラウザーの存在意義を指摘させたりと、説明しすぎで無粋な作劇が気になった。そこは言わなくても自ずとわかってくることではないかと思うのだが・・・。
 それでもそこそこ楽しめたのは、主演の松山ケンイチの力によるところが大きい。というかこの映画で見るべきところはほぼ全て松山ケンイチ。そういう意味ではスター俳優なんだよなー。顔は地味なのに。マンガのキャラクターにここまではまりきれる役者はそうそういないだろう。デスノートのLにしても本作の根岸=クラウザーにしても顔が似ているというわけではない(まあそもそも相手は二次元だが)ので、「ここを押さえておけば似る」というポイントの掴み方がすごく的確なのだと思う。特に社長に部屋を大改造されて恨みつらみスイッチが入ってしまうシーンは見事だった。稀有な人材だと思う。この先もマンガの実写化にばかり借り出されそうでちょっと心配ですが。なお社長役の松雪泰子もパンチラをものともせずに頑張っていたが、ちょっと型にはまりすぎだったかなーと。見ていて若干むずがゆくなった。
 なお、デスメタルが本気で好きな人は、音楽面には期待しない方がいいだろう。少なくともデスメタルではないし、予想通り音と演奏の演技は全く合っていない(笑)。客層を考えるとしょうがないが、音楽はかなりポップス寄りになっている。個人的には石田ショーキチが参加していてちょっと嬉しかったが。あと、カジヒデキが根岸作の「ダサいポップス」として曲提供していて、なんて心が広いのかと思った。本人も出演しているのだが、観客の反応が皆無だったところにジェネレーションギャップを感じた。