聴覚障害を抱える大学生ミンシァン(東明相(イーストン・ドン))は、高雄から自転車で、台湾島の湾岸一周の旅に出る。監督は陳懐恩(チェン・ホァイエン)。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督『非情城市』の撮影を担当した人だそうだ。
 若者が旅の途中で色々な人たちと出会うという、オーソドックスなロードムービー。台湾の海沿いの風景が美しく、観光地紹介映画としても見られる。日本の湘南あたりと似た雰囲気の場所や、沖縄と似た雰囲気(実際、植物系は似ているらしい)があり、海外なのに懐かしい空気感がある。日本の南エリアに似た感じだろうか。また、過去に日本軍が駐屯していた痕跡がぽろぽろと出てきた。日本の唱歌を日本語で歌える老人達や、軍の施設の名残など。なんだか複雑な気持ちになった。昔のことのような気がしていたけど、昔というほど昔じゃないんだよなー。
 これは実際に現地に住んでいる人が本人役で出演しているのかな?という人たちがちらほら。ミンシァンと同じく自転車で台湾一週している男性とか、流木で独自の彫刻を作っているおじいさんとか。あと、自分達を解雇した工場への抗議運動をしているおばあさんたち。バスで抗議運動先へ移動するのだが、ちゃんと観光もする。横断幕を敷物にしてお弁当食べたりして、解雇されて困っているはずなのになんだか楽しそうだった。
 ロードムービーというと、主人公の家族が出てくるイメージがあまりないのだが、本作ではミンシァンの祖父母と、祖父母と一緒にくらす兄が出てくる。この祖父母が、ああおじいちゃんとおばあちゃんの家に行くとこんな感じだったな!という懐かしい気持ちにさせる。
 旅の1日目を最後に持ってくるという構成は、正直あまり意味があったとは思えないし、ドラマ作りもぎこちない。特に、映画のクルーとのエピソードや外国人女性、ストリートアーティストとのエピソードは少々こっ恥ずかしい。生活感のある人たちとのエピソードの方が、実感こもった手ごたえがあった。しかしそれでも、風景の美しさでなんとなくいい雰囲気の作品になっている。自転車で島一周という設定の勝利か。