パリの下町に住むパスカル少年は、赤い風船を見つける。学校に風船を連れて行くが、先生には締め出されてしまった。パスカルに懐いてくっついて回る風船だが、街のいじめっ子達に目を付けられ、追い回されてしまう。
 アルベール・ラモリス監督・脚本作品。1956年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(短編)を受賞、その他にも数々の賞を受賞した名作。『白い馬』はモノクロだったが、本作はカラー。グレー基調のパリの町並みに風船の鮮やかな赤が映える。色彩感覚が抜群だと思う。また、CGがない時代にこれをやったのかと唸りたくなる風船の動きの妙。多分ヒモを付けて引っ張っているのだろうが、時々えっどうなってるの?と思うようなところがあった。絶賛されるのがわかる。技術ももちろんすばらしいのだろうが、映画ファンの心をくすぐる、映画好きでよかったなぁ!と思える何かがある作品だと思う。『白い馬』と同じく、ストーリーはごくシンプル、セリフも殆どない映画だが、シンプルに徹した故の豊かさがある。
 1950年代のパリの風景が楽しい。パリの中でも特に下町っぽい、路地が入り組んだ地域が舞台だ。アップダウンも激しいので、少年が歩くだけで画面に結構変化がある。ロケ地は厳選したのではないだろうか・・・って『白い馬』の感想の時も書いたな・・・。ともかく、風景にはこだわる監督なんだろうなと。ファッションにも当時の雰囲気が感じられて楽しいのだが、パスカルが着ている寝巻きみたいな服はアリなんだろうか・・・。他の子はちゃんとズボンとセーターみたいな格好をしているのだが。本当に寝巻きとか部屋着なのかと思っていたら、教会にも下はこの格好のまま、上着だけジャケットに替えて行っていたので、子供服としては一般的だったのかしら。
 さて、この映画は終盤が本当に美しいのだが、しかしどことなくさびしさ、悲しさを感じた。パターンとしては『白い馬』と同じく、「この世では幸せになれない」ということだよなぁとしんみりしてしまうのだ。本作の場合、相棒が無生物だから心中かどうかはともかく、パスカルが同年代の子供社会の中では生き難いタイプの子だというのは想像に難くない。両親や兄弟の姿も見えないし(同居しているのはおばあさんなんだろうか、家政婦さんなんだろうか)、人間の友達も現れない。そういう子が、この世界にはもういたくないと思って見た夢なんじゃないかとも思えるのだ。