孤児院から実の父母である南条夫妻(野口五郎、浅野温子)の元へひきとられることになった葉子(水沢奈子)。しかし村の人間は南条の屋敷には怖がって近づかない。どうやら南条家には「タマミ」という娘がいたらしいのだが。
 楳図かずおの原作を、『地獄甲子園』『魁!!クロマティ高校』の山口雄大が映画化。そういえば山口はマンガ原作映画ばっかり撮ってるなー。そして着実に上手くなっている。本作は今までで一番普通・・・というか手堅いと思う。山口が手馴れてきたということもあるだろうが、オーソドックスなホラー、しかも昭和(時代設定は原作どおり)のホラーに徹したからか。また、マンガの面白さの構造をよくわかっている人なんじゃないかと思う。バカ映画要素はないので、山口雄大の映画、と思って見に行くと肩透かしを食らうかもしれない。
 私は原作を読んだことがなく、知識としてこんな話だよという程度にしか知らないのだが、「昔のホラー映画」と思って見るとそこそこ面白い。キャスティングも見事に昭和顔の役者を揃えていて、山口の拘りを感じた。特に南条夫妻のキャスティングは豪華といえば豪華なのだが、なんとなく笑いを誘われる絶妙なラインだと思う。主演の水沢奈子は、演技は決して上手くないのだが、やはり「昭和の美少女」という雰囲気があった。
 タマミの造形は、ぎりぎりでマンガっぽいラインに留めていると思う。もっとグロテスクにすることも可能だったろうが、基本的に「タマミもかわいそう」という設定がベースにあるので、あまり嫌悪感をあおるような造形ではまずいと考えたのだろうか。ただ、あまり「かわいそう」とは感じなかったし同情心も煽られなかったが。山口はもしかして、ねっとりとした感情、特に女性の感情の演出は苦手なのだろうか。原作読んでないので想像だが、本当はもっとタマミの恨みや妬みがじっとり描かれていたんじゃないかしら。なおタマミ本体はパペットとCGで作っていると思うのだが、それほど安っぽさは感じなかった。サルのように跳ね回る空中戦(笑)も楽しい。製作予算増えたんだなーと感慨深いものがあった(笑)。
 典型的な「何かが追いかけてくるよホラー」で全くお約束展開なのだが、結構ドキドキした。ただ、若干長く感じた。実際の上映時間はむしろ短い方なので、展開がもたついているということだろうか。