チェコアニメの特集上映。あー何かかわいくて和むものが見たい・・・と思っていたところ、たまたま時間が空いたので見てきました。4つのプログラムから成る特集なのだが、今回見たのはBプロ「アニマルプログラム」のみ。しかし和むかと思ったらあんまり和まない話が多かったような。

1『ネコの学校』
ブジュチスラフ・ボヤル監督作品('61年)。切り絵アニメーションと実写を組み合わせた作品だが、色彩がビビッドで軽やか。ネタと手法が上手くかみ合っていてクオリティ高い。そして、もう抜群にかわいい!ネコかわいい!面倒くさい子供の典型のような言動すらかわいい。

2『失敗作のニワトリ』
イジー・ブルデチカ監督作品('63年)。わりとあっさりした線の2Dアニメーション。クラスのみそっかすである少年が描いたニワトリが動き出し、珍鳥扱いされる。少年の絵が下手(というかいわゆる写実的な絵ではない)という設定なのだろうが明らかに上手いところが難点といえば難点だな(笑)。先生に劣等性扱いされる絵には見えない。そして平面ニワトリ(絵だから)の正面顔が、まあそうなるだろうなとは思うけど、実際にやられると妙。

3『かしこいウサギの話』
イジー・ティレル監督作品('80年)。絵本風のアニメーション。ウサギらしく飛び跳ねることも走ることも苦手だが、読書に目覚めたウサギのお話。お話のヤマとかオチとか子供向けらしい教訓とかを全く考慮していないゆるゆるな展開に却って驚いた。アニメーションとしての洗練度はイマイチ。

4『イラーネク超短編集』
ヴァーツラフ・イラーネク監督作品('75年)。これぞアニメの基本!なシンプルな線画アニメーション。ナンセンスでややシニカル。好きな作風です。特に「ピクニック」の実も蓋もなさには吹いた。

5『鳥になった生活』
H・マツォクレ、H・ドウブラヴァ監督作品('73年)。色鮮やかな2Dアニメーション。催眠術で鳥になってしまった母親を連れ戻そうとする父親と息子。ユーモラスだがホロ苦い。重要なのは「鳥になった」ってところじゃなかったのね・・・と。世界中に共感する女性(男性もか)がいらっしゃいそうだが、生々しいな。

6『グレイキャットの物語』
ヤロスラフ・ボチエク監督作品('77年)。クレヨン&水彩絵の具ぽいざっくりとしたタッチの2Dアニメーション。ネコが酒好きなのはともかく、何でアル中治療を?と思ったが、酔っ払った状態を「ネズミが見える」とでも言う風習があるのだろうか。ミイラ取りがミイラに、というお話。ネコかわいそう・・・。

7『ラブラブラブ?』
イジー・ブルデチカ監督作品('78年)。マンガっぽい2Dアニメーション。作家とクモの友情、というかクモの片思いで切ないわ・・・。間に女が絡んでいるというのがまたなんとも。日陰者の悲しみがあまりに痛々しく、お子さんには見せられません(笑)。

8『劣等感』
H・マツォワレ、H・ドウブラヴァ監督作品('81年)。ちょっと大人っぽいタッチの2Dアニメーション。かしこい飼い犬に劣等感を持つ主人。外国語をしゃべり文学を嗜み、主人の妻とチェスする犬は私でもいやだとは思うが(笑)、そもそも奥さんはなんでこの主人と結婚しちゃったのか謎です。結構黒々しいお話。この監督の作品は人間の滑稽さ、ホロ苦さが色濃い。

9『ブラックアンドホワイト』
ヴァーツラフ・ベドジフ監督作品('83年)。朱に交われば赤く・・・というわけではないが。黒い羊の群れに混ざろうとする白い羊。アニメーションと音楽のリズムがぴったりと合っていて、見ていて肉体的な心地よさ、楽しさがある。白と黒の線画によるシンプルなアニメーションだが、クール。このプログラムの中では一番気に入った作品。アニメーションの面白さは、ストーリーの面白さというよりも動きの面白さにある(と私は感じる)ことを再確認。