ヘイク・タルボット著、森英俊訳
 クラーケン島に、所有者であるフラント氏に招かれた男女。しかしフラントは突然死亡し、義理の弟テスリン卿は「自分が呪いの言葉をかけたせいだ」と取り乱す。しかもフラントの死体はありえないスピードで腐乱していた。一体何が起きたのか?孤島に集められた客という本格ミステリにはうってつけの舞台設定だが、普通に警察はやってくるし(笑)、呪いだ精霊だとオカルトめいた要素も強い。章が進むごとに本格ミステリっぽかったりピカレスク小説っぽかったり幻想小説ぽかったりと、ジャンル傾向と探偵役が代わっていく。なかなか実態をとらえられない奇妙な味わいの小説だった。が、最後はちゃんと本格。古き良き時代のミステリの醍醐味を味わえる。トリックそのものというより、目くらましのてんこもり加減が面白かった。