吉田修一著
大宮に建築中の超高層ビル。その設計士・犬飼と鉄筋工・隼人。2人の日常にうっすらとした圧迫感を感じていた。犬飼パートと隼人パートが交互に現れる長編小説だが、2人の接点は同じビルの建築にかかわっているという点のみで面識はない。しかしビルが影響しているかのように、それぞれの形で現状の崩壊を望んでいるように見える。どちらもセックスを介した変容ではあるが、隼人の場合はそれが自分の体に向かい、犬飼の場合は妻との関係に向かっているというのが対照的。隼人の「自分があせらないことに焦る」という気分はちょっとわかる。このままずるずると落ちていっても平気なのだろうがそれでも自分は平気なのかもしれない、でも踏みとどまらないとダメなんじゃないかという圧迫感。踏みとどまる為にとる隼人の手段は風変わり、というより不器用に見える。でも彼は彼なりになんとかなろうとしているところがちょっとやりきれない。著者は人の不安感、あとちょっとでくずれそうな瞬間にすごく興味があるのではないだろうか。カウントダウンされていく章立が更に圧迫感をあおる。こういう細かいところが上手くて癪なんだよなー。あと浮気の描き方が毎度毎度上手い(笑)。