16歳のジュノ(エレン・ペイジ)は同級生のポーリーと興味本位でセックスし、妊娠してしまう。彼女は広告で養子を探している理想的な若夫婦を探し、出産してから養子に出すことにした。かくしてジュノの妊娠生活が始まる。
 監督はジェイソン・ライトマン、脚本はディアブロ・コディ。アカデミー賞脚本賞を受賞しただけあって、確かに面白い!特に会話のテンポのよさとひねりのきかせかたは軽妙で楽しかった。ユーモアのセンスがとてもいいと思う。これ、英語がわかったらもっと面白いんだろうなー。字幕ではすくいきれない面白さがあるんじゃないの?!と歯噛みしてしまった。
 主人公であるジュノのキャラクターが魅力的というのも勝因の一つだろう。70年代パンクロックとコミックへの造形が深くホラー映画好きでギターが趣味といういかにもな文系サブカル男子キラー(笑)。しかしひねくれた言動の割には、10代らしくこまっしゃくれてブーブー言ったりするものの、意外にスレていない。こういう「普通にそこそこ幸せな(主観的には色々ご不満もお持ちなんでしょうが)子」という設定は、最近のアメリカ映画のティーンエイジャーとしては少数派のように思う。特に、両親との関係がかなり良い点は例外的といってもいい。高校生が出産という一見とんがった設定ではあるが、価値観はわりとコンサバというか、とんがっていないのだ。その点が逆に新鮮だった。
 また、彼女の周囲の人たちもいい。親友のリアはいかにもいかにもなバービー人形的美少女で、ジュノとは趣味がぜんぜん違いそうなのだが、友情に厚い。しかもなぜかDBな数学教師に片思い中だ。赤ん坊の実の父親であるポーリーはぼんくら扱いされているが、実は本気でジュノのことが好き。実父は空調工事をしているエンジニアで、インテリではないが娘をばっちり愛しているし、ネイルサロン勤務の義母も、いざとなればジュノの為に啖呵を切る。ベタな設定になりそうなところ一ヶ所スっとはずす、キャラクター造形のさじ加減が巧みだ。特に両親の造形に好感が持てる。ジュノに妊娠したことを告げられた時の、ショックだが騒ぎはしない父親、驚くもののすぐ現実的なところに立ち返る義母のリアクションに、2人の性格が如実に現れていている。こういう愛情のあり方は見ていて安心する。
 「一人で産めるもん!」と言わんばかりだったJUNOだが、やはり10代の女の子なわけで、ここまでは大丈夫だがこれ以上は許容量オーバーになってしまうという部分もある。ストーリー作りにおいて、その線引きが結構冷静になされていたと思う。養子先のカップルの顛末を知ってショックを受けてしまうところでは、まだ結構子供だったんだなぁと(それまで大人と対等にやりとりしているだけに)実感させる。またこのエピソードから、彼女が家庭というものについてかなり良いイメージを持っていたんだなということも分かる。このへんも最近の青春映画としては結構めずらしいなーと思った。
 全般的に楽しく元気が出る映画なのだが、ちょっとイタい気持ちになる部分も。ジュノのティーンエイジャーらしいわがままと未熟さもその一つなのだが、最大のイタさの元は、養子縁組先のカップルだろう。妻は母性が過剰すぎて養子計画に暴走気味、それを許容しているように見える夫は、本当は親としての責任を負いたくない。自分が子供でいたいのだ。しかし妻は子供を持つという自分の夢に夢中で、夫の躊躇には気づかない。私、妻のいきすぎた母性は全く理解できないが、夫のまだ遊びたいんだよ!的な葛藤には共感してしまった。この夫、ギターコレクションしていてバンド経験あってホラー映画マニアでという、ある種の文系男性の典型みたいな人で苦笑いを誘うのだが、その気持ちわかるよ!と肩の一つもたたいてやりたくなる。若い女の子が自分の趣味に理解を示して話にノってくれたら、そりゃあその気になっちゃうよな!というショボい点も含め。