異国情緒溢れるレトロな風景の為、しばしばロケ地となる港町・守加護。クラブの支配人・備後(妻夫木聡)は町を牛耳るギャングのボス・手塩(西田敏行)の情婦・マリ(深津絵里)に手を出し大ピンチに。伝説の殺し屋デラ富樫を5日間でつれてきたら助けてやると言われた彼は、売れない役者・村田(佐藤浩市)を殺し屋に仕立てることを思いつくが。
 三谷幸喜監督の新作映画となる。確かに手堅いし老若男女が楽しめそう、カメオ出演者も超豪華という娯楽大作ではある。が、三谷作品として傑作かといわれると微妙だ。三谷作品は大概テンポがいいが、本作は冒頭、備後が捕まって奇策を思いつくまでの流れがもたつき、おおげさなセリフ回しもイタイタしい。もちろん意図的に「いかにも」にしている(往年のハリウッド大作ぽくしたかったのだろうか)のだろうが、映画を見ている側のエンジンがかかりきっていない段階でこれをやられると少々辛い。撮影所の村田サイドに切り替わるとようやく調子が出てきてほっとする。
 村田はオールアドリブの映画撮影でギャングたちは俳優だと思い込み、ギャングたちは村田が本物の殺し屋だと思い込んでいるという、誤解の反復によるコメディ。村田と手塩の顔合わせシーンの「映画なんだからリテイクするだろV.S.この人なんで同じフレーズくりかえすの?!」を始め、三谷らしく畳み掛けるようなシチュエーションの数々は少々くどい。しかし佐藤浩市の怪演もあって、このあたりは素直に楽しかった。ザ・佐藤浩市ショーといっていいくらいの活躍だ。さらに備後と村田に相対する手塩役の西田が、意外にも抑えた演技で良かった。この人くどくてあまり好きじゃないんだけど、やっぱり喜劇が上手い人なんだなーと再認識した。また、最初は村田が闖入者であるが、最後には手塩が闖入者・部外者となり、偽者が本物を撃退するという反転の構図は派手でいい。多分、三谷は「偽者」である映画への愛情表現として、この構図を設定したのだろう。
 三谷が映画好きなのはわかる。しかし、これが映画賛歌なのだといわれると、それはちょっと違うんじゃないのと言いたくなる。映画って素敵!ということが映画賛歌というわけじゃないんじゃないのと。あと、三谷が賛歌するのはかつてのいわゆる名画であって、今なぜ映画なのかという主張にはなっていないのではないかと思う。
 本作に対して評価が辛くなってしまう最大の要因は、セットの造形だ。妙にメルヘンチックで作り物めいている。多分すごくお金がかかっているんだろうけど、何か安っぽくて興ざめしてしまった。こういうのを素敵な町並みと思うセンスにはちょっとついていけないわ。あと、三谷には女性の造形があんまり上手くない。本作のマリも、何をどうしたくてどう思っている人なのかがあまり見えてこず、最後の選択も唐突に見えた。