59歳の艶子(りりぃ)が経営する古いラブホテルの屋上は、誰でも出入りできる公園になっている。その公園を訪れる家出少女・美香(梶原ひかり)、孤独な主婦・月(ちはる)、そしてラブホの常連・マリカ(神農幸)。
 PFF出身、熊坂出監督の長編デビュー作。本作はベルリン国際映画祭フォーラム部門で、最優秀新人作品賞を受賞している。デビュー作でこれだけ撮れるのなら、次回作も楽しみ。とは言ったものの本作に満足できたかというとちょっと微妙だ。
 「ラブホの屋上に公園」というワンアイディアで作られたんじゃないかと思うくらい、このアイディアは魅力的だ。公園の向こうには決して美しくも活気に溢れているわけでもない風景なのに、見ていて妙に肌馴染みがいい。もちろんこういう風景(ふっつーのごちゃごちゃした住宅地とビル街)に全く興味がない人もいるだろうから、単に個人的な相性の問題だと思うが。
 3人の女性がからむ物語だが、3人の女性同士は直接的なかかわりは持たず、狂言回し的な存在である艶子を通して、エピソードをつなげている。美香と月のエピソードは、置かれた環境は全く違うが、孤独な女性という点で共通している。類型的なエピソードではあるのだが、類型だからこその安定感もある。食事のシーンや月の手帳等、細かいところの演出が悪くない(まあ、ベタはベタなんだけど)。特に食事のシーンはどの女性のエピソードでも入れようと決めていたようで、毎回ちゃんとご飯を食べているのがいい。美香と月のエピソードのオチは映画の最後で提示されるのだが、特に美香の顛末にはぐっときた。こういう道も選択できるくらいに彼女が大人になったんだなとぱっと分かる、きれいなオチだったと思う。
 さて、残る女性はマリカだが、彼女のエピソードはちょっと問題があったように思う。このエピソードはマリカだけではなく、それまで狂言回しであった艶子の内面を見せるものでもあるのだが、マリカも艶子も掘り下げ方が中途半端だったと思う。艶子が抱えているものについて、それまで殆ど伏線を敷いていないので、提示のされかたが唐突に思える。また、マリカについては行動がちぐはぐで、単に失礼な女にしか見えない。彼女はある目的があって様々な男を連れてラブホに通っているのだが、彼女がなぜそういう行為をしているのか、説得力が薄いのだ。それは女性に対する理解がちょっと浅いんじゃないですかと突っ込みたくなった。クライマックスともいえる艶子とマリカが公園でお弁当を食べるシーンで、セリフがいきなり説明過剰になるのも残念。そのセリフが説明していることを、このシーンに至るまでの映像で示してほしかった。あー監督ここで力尽きたのね・・・と何かものがなしい気持ちになった。あと、ラブホを舞台にする必要性があまりなくなっちゃってるのも惜しい。