人がまるで虫のようだ!というムスカ様マインドに溢れたパニック映画。NYに何かでかいものがやってきて街をばんばん壊して人がどかどか死ぬ。
 災害現場に残されたビデオテープ、という設定で作られた映画なので、画面は家庭用ハンディカム風にブレまくる。「酔った」という感想も多く目にした(私は全然大丈夫だった。酔うほどのブレではないと思う)。しかし、素人くさい映像を演出しながらも、主要登場人物が何をやっているのか、「何か」は一体どういうものなのか、見せるべきところはちゃんと見せている。時々アングルが決まりすぎていて、それどう見てもプロの仕事だよ!と突っ込みたくなるのはご愛嬌。この手の「擬似ハンディカム映画」としてはかなり良くできているのではないかと思う。
 ただ、「えっこれだけ?」という物足りなさも否めない。かなり早い段階から話題作・大作として宣伝されていたので肩透かしをくってしまったというところもあるかもしれない。映画の面持ちが、大作というよりも良くできたB級といった感じなのだ。それなりの費用がかかっているだろうし、続編の予定もあるとの話だが、いまひとつ地味。本作を見て続きを見たくなるかというと、微妙だ。「何か」を最初からばばーんと見せるか、もしくは最後の最後までほとんど見せないかのどちらかだったら、もっと衝撃があったのではないかと思う。
 もっとも、このいまいち感は、私が怪獣映画にもパニック映画にもそれほど関心がないからだろう。エンドロールの音楽に如実に現れているが、明らかにゴジラを意識しているのだ。その方面に造形が深い人が見れば、色々と発見があって面白いのかもしれない。
 金持ちも貧乏人も、老若男女ばんばん死亡していくというある意味人類皆平等な映画だが、主人公カップルのラブストーリーは不要だったと思う。ビデオに残っていた数日前の映像と災害時の映像を織り交ぜるところなど、ちょっと作為を出しすぎたんじゃないかと。それをやると、実録風にした意味が薄れてしまう。ロマンス部分だけ普通のハリウッド映画なのだ。人間に対して冷淡に徹した方が、この作品の持ち味が出たんじゃないかと思う。