夫を突然亡くしたオードリー(ハル・ベリー)は、葬儀で夫の親友・ジュリー(ベネチオ・デルトロ)と会う。かつては弁護士だったが麻薬に溺れたジュリーをオードリーは好きではなかったが、夫はジュリーとは子供の頃と変わらぬ友情を保っていたのだ。オードリーはジュリーに同居を持ちかける。
監督はスサンネ・ビア。これが初のハリウッド映画(そして英語の映画)となる。前作『アフターウェディング』には、良く出来ているがちょっと図式化しすぎでは?と思ったのだが、本作は製作担当であるサム・メンデスの匙加減によるものなのか、もうちょっと柔らかめで間口が広くなっている。ビア監督は「愛する人を失ったときどうするか」という普遍的なテーマを繰り返し扱っているが、本作がいちばんわかりやすい形になったのではないかと思う。
それにしても映画作りが上手い。唸っちゃいますよ。説明的なセリフやモノローグは一切排してあるのに、どういう状況なのか、この人とこの人はどういう関係なのか、すぐにわかるのだ。また、時間軸がしばしば過去へ飛ぶのだが、違和感がない。ああこれはあの頃の話ね、というのが見る側にすっと入ってくる。編集が上手いんだろうなーこれは。最小限の要素で最大限の説明が出来ている感じ。無駄がなくすっきりとしている。
愛する者を亡くした際の悲しみだけでなく、「なんであの人が!」というやりばのない怒りの描き方が巧みだった。夫が出来なかった幼い息子への水泳のレッスンを、ジュリーがやりとげてしまったことに対する「見たくなかったわ」という言葉は、「あなたが死ねばよかった」という強烈なセリフよりも、彼女の心情を的確に表していたと思う。また、外見的にも、夫を亡くした当初はかなりどうでもいい感じの服装だったのが、終盤はちょっと洒落た(過去のエピソードで見られたような)服装になっている点など、目配りが細やかだという印象を受けた。こういう細かい所をきちんと処理できていると、ストーリーにさほどひねりがなくても作品に厚みが出ると思う。
主役であるオードリー、ジェリーの造形はもちろんのこと、脇役の造形がいい。子供達はかわいくてキャラクターが立っている。麻薬更正施設で働く元中毒者の女の子(ジェリーのことをちょっと好きらしい)も、最初うざったい女的な側面を見せ、しかし専門分野に関しては実務的でしっかりしているという側面を見せることで、真面目だけど人へのアプローチがあまり上手くない子なんだなということを提示する。また、人へのアプローチの仕方という点においては、オードリーの夫の仕事相手だった近所の男性にぐっときた。一見無神経な人、気の効かない人のようであるのだが、彼なりのやり方でちゃんと機を読んでいる。そして「私はあなたに関わりたいが、どうか」と率直に表せるというところに、人と人との関わり方の一つの可能性を見た感があった。
シビアな状況ではあるが悪人は出てこないので、そういう意味では安心できる。ただ、彼らの善意はオードリーの夫がすばらしい人物だったからこそという側面もある。近所の男性は、夫への友情(ないしは仁義みたいなもの)ゆえにジェリーに対しても友情を示したとも考えられるのだ(もちろん、ジェリーの人柄が悪かったら成立しないのだが)。死者(もしくは死にゆく人)が生きている人たちを結びつける、という点では、前作からテーマが引き継がれているとも言える。
監督はスサンネ・ビア。これが初のハリウッド映画(そして英語の映画)となる。前作『アフターウェディング』には、良く出来ているがちょっと図式化しすぎでは?と思ったのだが、本作は製作担当であるサム・メンデスの匙加減によるものなのか、もうちょっと柔らかめで間口が広くなっている。ビア監督は「愛する人を失ったときどうするか」という普遍的なテーマを繰り返し扱っているが、本作がいちばんわかりやすい形になったのではないかと思う。
それにしても映画作りが上手い。唸っちゃいますよ。説明的なセリフやモノローグは一切排してあるのに、どういう状況なのか、この人とこの人はどういう関係なのか、すぐにわかるのだ。また、時間軸がしばしば過去へ飛ぶのだが、違和感がない。ああこれはあの頃の話ね、というのが見る側にすっと入ってくる。編集が上手いんだろうなーこれは。最小限の要素で最大限の説明が出来ている感じ。無駄がなくすっきりとしている。
愛する者を亡くした際の悲しみだけでなく、「なんであの人が!」というやりばのない怒りの描き方が巧みだった。夫が出来なかった幼い息子への水泳のレッスンを、ジュリーがやりとげてしまったことに対する「見たくなかったわ」という言葉は、「あなたが死ねばよかった」という強烈なセリフよりも、彼女の心情を的確に表していたと思う。また、外見的にも、夫を亡くした当初はかなりどうでもいい感じの服装だったのが、終盤はちょっと洒落た(過去のエピソードで見られたような)服装になっている点など、目配りが細やかだという印象を受けた。こういう細かい所をきちんと処理できていると、ストーリーにさほどひねりがなくても作品に厚みが出ると思う。
主役であるオードリー、ジェリーの造形はもちろんのこと、脇役の造形がいい。子供達はかわいくてキャラクターが立っている。麻薬更正施設で働く元中毒者の女の子(ジェリーのことをちょっと好きらしい)も、最初うざったい女的な側面を見せ、しかし専門分野に関しては実務的でしっかりしているという側面を見せることで、真面目だけど人へのアプローチがあまり上手くない子なんだなということを提示する。また、人へのアプローチの仕方という点においては、オードリーの夫の仕事相手だった近所の男性にぐっときた。一見無神経な人、気の効かない人のようであるのだが、彼なりのやり方でちゃんと機を読んでいる。そして「私はあなたに関わりたいが、どうか」と率直に表せるというところに、人と人との関わり方の一つの可能性を見た感があった。
シビアな状況ではあるが悪人は出てこないので、そういう意味では安心できる。ただ、彼らの善意はオードリーの夫がすばらしい人物だったからこそという側面もある。近所の男性は、夫への友情(ないしは仁義みたいなもの)ゆえにジェリーに対しても友情を示したとも考えられるのだ(もちろん、ジェリーの人柄が悪かったら成立しないのだが)。死者(もしくは死にゆく人)が生きている人たちを結びつける、という点では、前作からテーマが引き継がれているとも言える。