樋口敬二編
 著者は雪と氷の研究で知られる物理学者。名前は知っていたけど、その文章を読むのは初めてだ。いやー、いいですねーこれ。寺田寅彦の弟子だそうだが、文の上手さも師匠譲りなのでしょうか。自分の研究、芸術、師である寺田寅彦の思い出等題材は様々だが、何れも飄々としたユーモアがあり、明解。一方で趣味の水墨画の話になると、知人から借りた上等な墨を返したくなくてぐずったり、いい道具がほしくて堪らなくなったりと、お茶目な面も垣間見える。結構負けず嫌いだったみたいです。心は熱く、頭は冷たい。太平洋戦争前後の文章も含まれているが、情勢を見る目は冷静、というか冷めている。また、兵器開発における科学者の責任について、技術(とそれを生み出した科学者)に罪はないということはないと考えているのが興味深かった。