北アイルランド映画祭で鑑賞。料理トークショーの司会者ハリー(ブレンダン・グリーソン)はお茶の間の(主に中高年女性の)人気者だが、女グセ、酒グセが最悪でスキャンダルまみれ。妻にも愛想を尽かされ、離婚訴訟中だ。しかし離婚調停の前日、暴漢に襲われ意識不明に。奇跡的に意識を取り戻したものの、彼は25年分の記憶を失い中身だけ18歳に戻っていたのだ。監督はコンラッド・ジェイ。
 心は若返ったハリーは浦島太郎状態ですべてが新鮮。18歳当時に恋愛状態にあった妻への情熱も取り戻しているので、離婚を阻止しようと躍起になる。妻の方も、人が変わったようなハリーに悪い気はしない。このままとんとん拍子でハッピーエンド、人は変われるんだぜ!というオチに持っていくのかと思ったのだが・・・。そうはしないのがこの映画の大人なところだと思った。確かに妻の心は動く、しかしやったことをなかったことには出来ないんだよ、人間の本性は変わらないんだよというシビアな視線がある。しかしそれでもこの作品の後味が良いのは、変わろうと努力することはできるし、元通りにはならなくてもやり直すことは可能だという、地に足の着いた前向きさがあるからだと思う。こじんまりとしているがいいコメディだった。
 北アイルランドの映画ではあるが、地域色はそれほど感じない。海外に持っていっても普通にウケそう。ギャグの多くが万国共通の下ネタだからというのもありますが。ちなみに本作中で、おそらく中学生くらいであろうハリーの息子が堂々と飲酒喫煙しているが、いいの?子供に限らず、2000年の作品ではあるが男性も女性もスパスパ煙草をふかしていて、アイルランドではまだまだ禁煙文化は根付いていないんだなーと妙な所が気になってしまった。