アン・クリーヴス著、玉木亨訳
 CWA(英国推理作家協会)賞、'06年ダンカン・ローリー・ダガー賞(最優秀長編賞)受賞。日本でも「このミス」海外部門11位にノミネートされたそうだ。英国最北端のシェットランド諸島で、女子高校生が殺害された。過去、同じ村で幼女が行方不明になった事件と関係があるのか?シェットランド諸島の風土の描写が寒々しく陰影が深い。ミステリというよりも、全員顔見知り規模の村社会内でのしょうもない人間模様を楽しむ小説ではないか。ミステリとしてはどんでん返しが少々強引なので。アットホームさと窮屈さは紙一重であり、都会から引っ越してきたシングルマザーが感じるプレッシャーなどは結構生々しい。また彼女の元夫である地元の名士の、あくまで「地元の」名士である小物っぽさなど、ショボショボした感じの描写は上手いと思った。淡々としつつ、うっすら悪意がある感じ。でも「田舎の生活は窮屈でイヤ!」という意識は、読んでいる側にはあまり感じさせないところが不思議でもある。