フランスの、独特な治療をすることで調べる精神科クリニック「ラ・ボルト」。その患者たちが病院スタッフと共に演劇を作り上げていく様を追ったドキュメンタリー。病院と言っても、昔のお屋敷のような雰囲気のある建物に広い敷地、患者は敷地内を自由に出歩くことが出来、1日のカリキュラムやスケジュールも特に無いというかなり自由な雰囲気(症状の軽い患者が主だからだろうが)だ。不思議なもので、演劇を指導する側と指導される側の違いは明確なのだが、一緒に演技していると、どの人がスタッフでどの人が患者なのか、(私がフランス語を分からないということもあり)意外とよくわからない。あんまり大きな違いが無いようにも見えてくる。
 といっても、それぞれ事情のある人たちが相手なので、指導・サポートする側はかなりの忍耐を強いられたのではないかと思う。フランス語には「我慢」という言葉が無い、つまり我慢と言う概念がないということなのだろうが、この映画に出演している病院のスタッフや演劇の指導者(女優のマリー・レディエ)は明らかに忍耐力がある。でも、丁寧だし時間はかけるけど、健常者に指導するやりかたとあんまり変わらない。
 患者や病院スタッフの背景には、映画は一切触れない。一定の距離を置いているのだ。もっとも、冷たいというのではなく、ほどよい親密さが感じられる。というより、物理的にかなり近づいて撮影する為には、心を許してもらわなければならないから、自然と親密になっていくのだろうけど。最後、患者の1人が「社会がぼくを病気にし、社会がぼくを癒した」「(ラ・ボルトにいることが)母親に守られているみたい」と話すのは、ちょっと出来すぎというか、そういったことを言ってくれるのを製作側が期待しているということを読み取られたんじゃないかと感じる部分もあったが。