ドストエフスキー著、亀山郁夫訳
 古典文学としては異例の売上だったという、光文社古典新訳文庫で読んでみた。全5巻。しかも5巻目は本編ちょっとだけ(エピローグのみ)でながーい訳者解説が。ちょっと辟易しちゃった・・・。しかしドストエフスキーに初めて親しむ人には、やはり新訳の方をお勧めする。私もドフトエフスキー作品には強い苦手意識があったのだが、こんなに面白かったのかと目からうろこがぼろぼろ落ちました。本来文章(特に会話文)にリズムのある、テンポの良い作品だったのかしらと思った。なんかねー、壮大なコントみたいなんですよ。文章が新しいと、やっぱり読みやすくなるものなのね。
 父親殺しと兄弟の愛憎というどろどろな物語なのに、妙にコミカルだ。登場人物が皆浮き沈みの激しい気質でやたらとよくしゃべり(ロシア人は皆よくしゃべるんですか)、全編躁状態と言ってもいいからかもしれない。おまいらもうちっと落ち着け!人の話を聞け!とやんわりいさめたくなりました。お互いボール投げるばかりで一向にキャッチしようとしない。ボールを受け取ったかのように見えて、実は相手が投げたボールと別種のボールを手にしているようなちぐはぐな感じもする。会話量は多いのにコミュニケーションが成り立っていないのだ。また、地の文は第三者視点ではあるが、カラマーゾフ一家と同じ土地に住むらしい「私」と設定された語り手であり、いわゆる神の視点のように全知ではない。●●がこう言った、ということは判明しても、それが真実かどうかを裏打ちしてくれる存在はないのだ。●●の狂言ということももちろんありえるし、冤罪ではなかったということもありえる。このへんの収まりの悪さは、訳者解説にあるように、続編を予定していたからかもしれないが。しかし続編があったら読んでみた以かというと、そうでもないんだよな・・・。