名作と名高い業田良家の4コマ漫画がまさかの実写映画化。貧乏で発行な幸江(中谷美紀)と、無口で無職な乱暴者イサオ(阿部寛)のカップル。イサオは金はせびるしちゃぶ台はひっくり返すしで、ろくな男ではないように見えるが、幸江はひたすら彼に尽くすのだった。監督は『トリック』の堤幸彦。
 実は私、原作漫画はあまり面白いと思わなかったし、あまり好きではない。幸江は客観的に見ると不幸なのだが、本人は不幸だとは思っていない。何たってイサオを愛しているのだ。しかし私はどうしても、幸江の境遇は不幸だと思ってしまうし、いくら良いところがあるにせよ、何でまたちゃぶ台ひっくり返す甲斐性なしと延々暮らしているのかと思ってしまう。映画の方では、幸恵が「自分は今幸せなのか?」と自問し「幸せになりたい」と思っていることで、原作漫画よりは多少とっつきやすかった。
 さて、堤監督と言えばエキセントリックで悪ノリとも取れる派手な演出が特徴だったが、今回はびっくりするほど王道な人情映画になっている。奇をてらった映像もあまりない(スローモーションによるちゃぶ台ひっくり返しシーンは力入っていたが)。ストーリーにしても「幸せは気付かないうちにすぐそばに」「貧しくとも幸せ」という王道中の王道(もっとも、物語的にはこれまでも意外にベタなものを持ってくる監督ではあったと思う)。いよいよ王道回帰ですかと思ったのだが、まだ何となく迷っている印象を受けた。これ必要ないんじゃないの?という映像(カメラ逆さだったり、妙にガーリーな逆光入り映像だったり)が所々にあって、あら監督てば昔の自分を思い出しちゃったのかしらと思った。もっと王道、ベタに徹してもいいように思うし、それができる監督なんじゃないかなと思っているのだが。ここが踏ん張りどころでは。