チャールズ・ブコウスキーの自伝的小説『勝手に生きろ!』を、『キッチン・ストーリー』のベント・ハーメル監督が映画化。ブコウスキー(アメリカ人)原作なのにアメリカ・スウェーデン合作映画というのは何だか不思議だ。ブコウスキー(映画内ではチナスキー)役はマット・ディロン。ブコウスキーの小説を読むと、この人酒とタバコと女ばっかりでろくでもない人なんじゃないかと思うし、実際そういう人だったらしいが、それでも作品には(全てに対してではないにしろ)ぐっとくるし、作品内のブコウスキーのキャラクターもどこか憎めない。
 映画はブコウスキーの作家修行時代、と言えば聞こえはいいが、投稿作品はどの出版社でも採用されず、生活費を得る為の職も長続きせず、昼間から酒を飲んでフラフラしているという、社会的にはろくでなし決定な時代にスポットをあてている。でも、彼を心底「駄目な奴」と思えないのは、彼が他のこと(仕事や女性関係)にはいい加減極まりないが、書くことだけは絶対やめず、何度も何度も原稿をポストに投函し続けているからだ。書くことに対してだけは筋が通っているというか、誠実であり続けようとする姿勢が垣間見られるのだ。言葉を綴ることが自分の生き方であるという確信はブレない。ブコウスキーは多作な作家で作品の質もまちまちだが、元々何であれ書かずにいられないタイプの人だったんじゃないだろうか。もちろん、ブコウスキーが後に作家として評価されたからそう思うという側面は強いのだが、これが無名の作家志望者の話だったとしても、己の才能に見切りを付けられないイタい奴だとは思いながらもちょっと胸打たれる、少なくとも憎めないなぁとは思うんじゃないだろうか。いや、今だったらニートとして一くくりにされるのかもしれんけど。
 マット・ディロンがブコウスキーってどうなんだろうと思ったが、これが意外にいい。あまり人としてちゃんとしていない(笑)雰囲気が良く出ていたと思う。歩き方に特徴があったが、ブコウスキー本人がああいう歩き方をする人だったのかしら。ナチスキーが女に対して意外と優しい(というか躊躇した感じがある)、と同時にすごく突き放した所があるのも、ほどほどのルックスのディロンが演じると妙に説得力がある。また、ナチスキーの彼女役のリリ・テイラーも、すごくよかった。下着姿見ているともの悲しくなるところとかねー、疲れた空気感が出ていて。
 あと、音楽のチョイスも、ほどほどに寂れた感じがしてよかった。サントラ買ってもいいと思う。