田舎町で兄夫婦と同居しているファニー(ナタリー・ブトゥフ)は情緒不安定で、周囲からは変わり者扱いされている。兄嫁の浮気現場を目撃したファニーは怒りを爆発させ、家を追い出されてしまう。監督はジェローム・ボネル。
 あらすじ書いてみるとファニーが可愛そうな子みたいだけど、本人に悪意はないにしろ、こんな人身近にいたら厄介そうだなぁという人ではあるので、むしろ兄の苦労にしみじみとしてしまった。ファニー自身も、兄に迷惑かけているというのが分かっている(でも迷惑かけてしまう)というのがまたしみじみとさせる。このへんの、ヒロインを単にかわいそうな子にしないところのバランスがよかったと思う。兄は小学校教師と言う地域社会との繋がりの強い職なだけに、こりゃー気苦労も多いわ、と同情してしまうのだ。
 予告編を見た限りでは、なんだかメルヘンぽいのかなと思っていたのだが、その印象は半分当たって半分外れだった。ファニーは自分を受け入れてくれる人とめぐり合う。ファニーは他人とのコミュニケーションがうまく取れない人だが、巡り合った彼とは、言葉は全く通じない(フランス語とドイツ語だから)のになんだか通い合うものがあるのだ。彼と巡り合ったところで物語が終了したら、本当にメルヘンと言っていいところだ。でも監督はそうはしなかった。着地点は意外にほろ苦い。彼と一緒にいれば幸せかもしれないが、そこは一種のユートピア、夢の国であって、生身の人間である彼女が暮らすべき場所ではない。自分が生活する「この世」に帰らなければならないのだ。しかし、彼女が「この世」で生きていくことを選択したことに、ささやかな希望が見えてくる。
 森の中の空き地や小道の感じがとてもよくて、山へ行きたくなってしまった。あんな森の中を散歩したい。自然が人を癒すというのはあまりに紋切形だし、素朴すぎるきらいはあるとは思うが、やっぱり山とか海とか、たまに行くといいもんですよ。